【ライブレポート】『夏の終わりと夜明け前』東京編|ハローモンテスキューが作り上げた星空のような空間

ライブレポート

男女混合スリーピースロックバンド・ハローモンテスキューが、自身初の両A面Single『彗星/シーサイドガール』リリースを記念し、全国を回るツアー『tour 2021 “夏の終わりと夜明け前”』を開催。

ツアー4公演目となる東京公演が、11/26(金)に下北沢のライブハウス”近松”にて行われた。

ここ近松に集ったのは、ハローモンテスキュー、あるくとーーふ、sympathyと、それぞれが固有に放つカラーの異なる3組。これら3組の共通点を挙げるのならば女性ボーカルをフロントに据えていることであるが、その3種の声色はまるで異なっている。

「最高の夜にしたい」「楽しい夜を作って帰ります!」

ハローモンテスキューのフロントマン・はたけ(Vo/Gt)はMCでそう語っていたが、3組の奏でたカラフルな音色によって、宣言通りに最高の夜が作り上げられた。

あるくとーーふ

トップバッターを飾ったのは、男女混合5人組バンド・あるくとーーふ。ステージ奥の方に佇んでいる、バンドのマスコットキャラクターのぬいぐるみと時折目が合う。SEをバックにバンドメンバーがステージに登場し、各々緩やかなフォームから披露した一曲目は『オオカミUFO』。ゆらゆらと肩を揺らしながら、体をくねらせながらボーカル・利佳子は透き通るような歌声を響かせ、観客を惹きつける。利佳子の歌声には多彩な表情が隠されており、少し声の調子を変化させるだけでその聴こえ方は大きく変わる。ゆらゆらとムーディーに流れる空気感にはキーボードの音がよく馴染むし、連打されるキックも心地良い。喉の奥を震わせるように大サビを歌い上げ、利佳子は『最高の1日にしましょう!」と一言。続いて1曲目に醸し出された雰囲気とは一変、ポップネス溢れる『カラフルカラフル』を披露。黄色を基調とした明るいライティングを従えて奏でられるまさに”カラフル”なアンサンブルには、日々の退屈も仕事の鬱憤もすべてかき消してくれるほどの力がある。日常の傍に置いておきたくなるような、背中を押してくれるようふなポップサウンド、それこそがあるくとーーふの真骨頂なのではないだろうか。間奏ではシャープなカッティングがポップサウンドにアクセントを加えるなど、ロックにもポップにも消化し得る鮮やかな音世界が作り上げられた。時折メンバー同士で顔を見合わせ演奏し、「楽しい」という感情が炸裂していたのも気持ちが良い。続いて疾走感溢れるアンサンブル、絶大な攻撃力を誇るサウンドが爽快な楽曲『トリッキーフューチャー』をドロップし、カラフルに彩られたポップネスワールドから一変、刺々しく光を散らす照明演出をバックにエッジーなギター、ソリッドなベース音を響かせ、刺激的な音世界が創出される。利佳子の甘く柔らかくも、内包的な力強さを滲ませる歌声が”攻撃的なバンドサウンドに違和感なく溶けていく。続く『HAPPY END』では、キーボードの軽やかな音色が表立ちながらベースがヘヴィーなグルーヴでどっしりとリズムを支え、メロディアスな空気感が練り上げられた。曲が終わり、利佳子は「CDのリリースは、バンドにとって大事なこと。そんな大事なツアーにハローモンテスキューから呼んでもらえて嬉しいです。」と一言。「手拍子したり、体を揺らしたりしながら最後まで楽しんでいてください!」と観客に投げかけ披露したのは、『ハニーレモンジンジャー』。ポップネスに満ちた空気感の中、間奏でベース、ドラムが各々ソロプレイを見せつけるなど、彼らは心から「楽しい」を開放させた様子で変幻自在なバンドアンサンブルを奏でた。最後に「手拍子いいですか?最後の曲です!」という言葉を合図に2ndミニ・アルバム『サイファールーム』のトリを飾る楽曲『次回予告のその後で』を披露。ここでも利佳子の歌声は多彩な表情を見せ、幾重にも重なり合う緻密なアンサンブルに飾り気なく溶けていた。「あるくとーーふでした!またね!」とステージを後にした彼女たちは、しっかりと自分たちの”攻撃的ポップ”をここは下北沢・近松に刻みつけ、sympathyにバトンを託していく。

sympathy

あるくとーーふのバトンを受け取り、「ネコ、ニャン」と何度も繰り返される中毒性満載のSEをバックに登場したのは、4人組ガールズバンド・sympathy。体調不良によりバンドに参加できなかった期間があったというドラム・門舛ともかも正式に復活し、4人の表情は極めて晴れやかだ。互いに息を合わせ、1曲目に披露したのは『今年も夏が終わる』。ツアータイトル”夏の終わりと夜明け前”を擬えたような選曲である。”揺れるロック”を謳う彼女たちらしく、全身を使って揺らしたくなるような空気感が、そのゆったりとしたサウンド、ボーカル・柴田ゆうの歌声によって作り出される。つま先が自然と地面から離れそうな浮遊感に包み込まれたところで、チカチカと光を放つ照明演出をバックに先ほどはギターを持っていなかったボーカルがギターを持ち披露されたのは、『スクールガール・コンプレックス』。ゆらゆらと揺れていた観客は、ステージに向けて手を振りかざし始める。ドラムのダイナミズムも好調に、最後の《何もない 何もない / わたし何もない 何もない》と歌うところでは、”揺れるロック”が再び顔を出し、観客の体も心も揺さぶるなど、自由自在に緩急を操っていく。攻撃的なアンサンブルを見せつつ、”揺れるロック”の記名性もしっかりと発揮したところで、最後はメンバー4人が向かい合う形で音をまとめ、「sympathyです!どうぞよろしく!」と士気を高めていく。「楽しすぎてやばかった(今の演奏)。楽しくて嬉しい、嬉しすぎて泣きそうだった。」とMC。「お客さんが居るから、私たちはステージに立てる。ありがとうございます。」と感謝を伝えると、照明が落ちた暗がりでボーカルにスポットライトが当てられ、エモーショナルな雰囲気がステージに立ちこめる中《煙草の煙で咽せてる私を/優しく抱きしめて》と、物憂げに歌い出す。サビではコーラスがボーカルの歌声に何層にも折り重なるように優しく響き、揺れる、優しいロックを感じさせる。曲の終わりでは《愛せる》というフレーズを「あいせ / る」と、文字間隔を数秒空け余韻を残すように歌い、メロウな空気感を演出。その後『彼女はストリッパー』『浮世離れしようよ』とライブでしか聴けない2曲を立て続けに披露。感情剥き出しのボーカルの歌声、クールに始まるドラムのカウント、尖り切ったギターサウンドとタイトにリズムを刻むドラムが激しくせめぎ合うアンサンブル。他にも骨太に支えるベース音、間奏で歪みを効かせ暴れまわるギターフレーズ、この2曲の間にロック・バンドとしてのソリッドな演奏力を十分に見せつけ、それらの気迫に応えるように息のあった手拍子、気持ちの良い縦ノリで観客は盛り上がりを高めていく。続くMCではライブの告知を早々に、ボーカルは改めて「ライブって楽しい。季節の変わり目に、こうしてまたハロモンとライブできて嬉しいです。呼んでくれたハロモンに”ありがとう”を伝えたい」と感謝を伝える。「またどこかで会いましょう、今日このライブで何か伝われば嬉しいです!」と言葉を残すと、ステージが黄色い昭明に照らされていく中『レモネード』をドロップ。ドゥンドゥンと唸るベース、共にリズムを刻む軽快なドラムの音がはっきりと聴こえてくる。Cメロに差し掛かるとアンサンブルの爆発力はさらに加速していき、大サビに突入すると、今日イチの破壊力を誇示し、アウトロでも尖り切ったギターの勢いは止まるところを知らず、どこまでも真っ直ぐに鳴り続けた。柴田は「ありがとう!sympathyでした!」と言い放ち、ラストナンバー『さよなら王子様』をBPMに緩急をつけながらクールにプレイし、最後は向き合ってお互いの音を確かめ合い、颯爽とステージを後にした。

ハローモンテスキュー

あるくとーーふ、sympathyと大事に繋がれてきたバトンを最後に受け取ったのは、本日の主役・ハローモンテスキュー。ボーカル・はたけは長い髪を結び、ポニーテールに整えて気合十分な様子だ。ドラムには、抜群のリズム感を誇る茄子川を迎える。入念にチューニングを行い、音がピタッと鳴り止むのを合図にはたけの力強い歌声で《夏の匂いがずっと嫌いだった》と歌い出された1曲目は、『がらんどう』。”夏の終わりと夜明け前”というツアータイトルにぴったりの曲を、各々自信に満ち溢れた様子でプレイする。手拍子があまりにも息ぴったりに曲のリズムに乗せて打ち鳴らされるものだから、本当に1曲目なのか?と思わず疑ってしまう。観客とメンバー間の心の距離感が限りなく近い証拠だろう。それほどまでに、メンバーと観客はお互いにこの日を待ち侘びていたのだ。「ハローモンテスキューです!どうぞよろしく!」とはたけが吠えるのを合図に、先程の熱量そのままに『彗星』と対をなす最新シングルのA面『シーサイドガール』を披露。Cメロでは手拍子が起こり、次第に音圧を高めていくバンドアンサンブルに合わせるように、その鳴りも大きくなっていく。1曲目時点での観客とメンバー間のシンクロ率が100パーセントだとしたら、この時点でのシンクロ率はそれを上回る120パーセントくらいではないだろうか。続く軽快なポップソング『フランソワ』では爽快なカッティングや4弦ベースの渋みが随所で炸裂する中、ノリの良いリズムに合わせてはたけは《今日は特別な日になりそうだ》と、ほぼ満員の近松でライブができていることを祝福するかのように歌い、観客全員を”ハロモンワールド”へと誘っていく。ここまでの域に達すると、もはやシンクロ率は測定不能である。楽曲の持つポップ性でフロア全体のムードを暖色に染め上げたところで、ライブで披露するのは比較的稀だという人気曲『よくある話』に繋いでいく。テンポよく流れていくメロディに、踵を浮かさずにはいられないといった様子で、観客は上下に跳ねながらノリを刻む。2番Bメロで鋭くカッティング、大サビ前に勢いよく切り込まれるフィルなど、曲のフックとなる要素を味わいつつ、一体感が最大限にまで達した”ハロモンワールド”の住人として、各々が小刻みにノリを楽しむ様子が際立っていた。先ほどまで煌びやかだった照明がトーンを落とし、フロアに漂う雰囲気も一変したところで《ねえいつか 僕らには終わりが来るってことも / わかってるよ わかってるつもりなんだ》と、『なんでもない話』の冒頭のフレーズを哀愁染みた声で歌い上げる。エモーショナルに歌われる歌声の速度に合わせるように、一歩一歩踏みしめるように奏でられるアンサンブル。大サビ直前で音が一気に流れ込み、感情を全て放出するかのようにボーカルもボリュームを上げ、壮大なバラードへと成熟する。最後は音がピタッと止まり、一つの物語を読み終えた直後のような感覚が襲ってきた。曲を終え、「今日は皆んな遊びに来てくれてありがとう。出演してくれたあるくとーーふとsympathyにも感謝してます。」とMC。ギターの弦が切れるといったハプニングが起こったことも笑い話にひとしきり語り、緊急で新たなギターを譲り受けたはたけはご満悦な様子。「こうして助けてもらえるのも、バンドの良さですよね。メンバーの助けがあったからツアーも回ってこられた」とバンドの尊さを改めて実感するはたけ。続けて「ツアーを回る中で各地に行っても、どこの地域でも皆温かく迎えてくれて。こうしてバンドをしてると、自分自身救われることが沢山あるんですよね。」と語り、ファンへの感謝を表していたのも印象深い。「2組(あるくとーーふ、sympathy)のバトンをしっかり受け取って、最高の夜にしたい。星空みたいなライブハウスを作り上げたい。楽しい夜を作って帰ります!」と宣言し、ありったけの想いを込めて披露した曲は、最新シングルより『彗星』。直前のMCで語っていた通りに星空を思い描くような楽曲をここで持ってきたのは、完璧な運びではないだろうか。サビで《一等星になれたらなんて》と歌うはたけのピュアな歌声には、「(今日ライブに遊びに来てくれた)あなたの一等星になりたい。」そんな強い想いが滲んでいた。その後「わたしの歌よ、届け!」と祈りを捧げ、赤色の光で満ちたステージ上で『あなたと。』を力強くも、観客の心に優しく寄り添うようなアンサンブルで披露。時に飛び跳ねながら、シャープなギタープレイを見せる708や、サビで両手を大きく広げ、観客と一つになろうとするカドタの様子に応えるように、観客のボルテージもさらに上昇していった。アウトロではギターの残響音を響かせ、本編ラストの曲『スワロウ』に繋ぐ。《最後なわけじゃないし / 笑っててを振るよ》と、観客との再会を約束しつつ歌い終えたところで、「ありがとう!ハローモンテスキューでした!」と声高らかにステージを後にした。当然起こる観客のアンコールに応え、再びステージに姿を現す彼ら。なかなか姿を見せないはたけに笑みを浮かべるメンバーだが、暫くしてツアーグッズのロンTを着てはたけが登場。「このTシャツ、わしがデザインしました!」と得意げに言い放つのにも、彼女の内に秘めた無邪気さが溢れている。ギターのチューニングを済ませ、アンコールに披露したのは『今日が終わっていく』。タイトル通り、今日という特別な日が終わりを迎えることを名残惜しむ気持ちを滲ませながらも、「またすぐに皆と会える」という期待も込めて明るく、前向きな声色で歌い切った。《どこかで会えたらさ また》という終盤のフレーズの煌めきが、忘れられない。

まとめ・セットリスト

ライブが終演し今日という日が終わってしまっても、ハロモンは決して観客を置き去りにはしない。同じ歩幅で日々を歩み、彼らの音楽で日常を彩ってくれる。日常を飾り気なく普遍的に歌うからこそ、彼らの歌は胸に刺さるのだ。 “夏の終わりと夜明け前”というツアータイトルに隠されているのは、”ライブ終演後の空虚感=夏の終わり”、”ハロモンにまた会える期待=夜明け前”というメッセージであるように思えてならない。

セットリスト・あるくとーーふ

M1. オオカミUFO

M2. カラフルカラフル

M3. トリッキフューチャー

M4. HAPPY END?

M5. ハニーレモンジンジャー

M6. 次回予告のその後で

セットリスト・sympathy

M1. 今年も夏が終わる

M2. スクールガール・コンプレックス

M3. SNS

M4. 彼女はストリッパー

M5. 浮世離れしようよ

M6. レモネード

M7. さよなら王子様

セットリスト・ハローモンテスキュー

M1. がらんどう

M2. シーサイドガール

M3. フランソワ

M4. よくある話

M5. なんでもない話

M6. 彗星

M7. あなたと。

M8. スワロウ

M9. 今日が終わっていく

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