【ライブレポート】11/30(火) MOSAiC presents『City Lights vol.84』 @ 下北沢 MOSAiC

ライブレポート

12月への突入を目前に、季節の移ろいを感じる11月30日。下北沢のライブハウスMOSAiCによるライブイベント”City Lights vol.84″が開催された。

イベントのタイトル『City Lights』には、「消えた街の明かりを灯すため、街の光を消さないため」という意味が込められている。

MOSAiCに集ったのは尾崎リノ、3markets[ ]、マイアミパーティー、かめがいあやこ(ポップしなないで)、いつかのネモフィラの全5組。

キャパ200人ほどのライブハウスを、このイベントを待ち侘びて駆けつけた大勢の観客が埋め尽くしていた。

いつかのネモフィラ

トップバッターとして先陣を切り、ボーカル・前海の柔らかく繊細な歌声でライブハウスを優しい光で包み込んだのは、いつかのネモフィラ。1曲目『その風を知って』では、《ふわり春の風が吹いて》と温もり溢れる春風を肌で感じるフレーズ。続く『ブルーアワー』では曲名通りの青い光でステージが照らされ、《空の青さ》《悲しみの青》など青色にフィーチャーした言葉をドロップ。これら楽曲の核となるフレーズを、緩やかなアンサンブルの軌道上で優しく、時に感情を剥き出しにして歌う前海。まるで底なし沼のように際限ない表現力を秘めたボーカルこそが、いつかのネモフィラの主たる軸といえるだろう。その表現力は声色だけでなく、歌唱中の表情にも顕著に表れている。切ない感情を歌ったパートでは切なさ全開の表情を、哀愁溢れるパートでは喜怒哀楽の哀を全面に押し出した面持ちで歌う。「下北沢の明かりを切らさないように。今日一日を彩れるように、歌っていきます。」と語ったMCの後に披露した『逆にね。』では、その言葉通りのパフォーマンスを披露して見せる。まるで夜道に灯る街灯のような温かく包容力のある歌声が響き渡り、仄暗いライブハウスを鮮やかに彩っていく。4曲目『マジックアワー』では、曲名通りに夕焼けをイメージさせるオレンジ色のライトがステージを包み込み、前海の優しく温かみのある歌声とよく馴染んでいた。最後のMCでは「手洗いうがいしっかりしいや。」と角のとれた優しい関西弁で観客を気遣うなど、前海の人柄の良さを感じさせる場面も。最後に、白色ライトで照らされるステージ上でラヴソング『リタ』を歌い、ステージを後にした。日常に溶けていくような温かなメロディーと優しく包容力のあるボーカル。双方のバランス感が絶妙で、ずっと聴いていると、彼らの音世界にこの身をすべて委ねたくなってしまう瞬間が訪れる。いつかにネモフィラの楽曲には、オレンジ一色に染まりきった夕焼け空がよく似合う。

かめがいあやこ

2ピースバンド・ポップしなないでのボーカルとして活動するかめがいあやこが、本日は珍しく弾き語りスタイルで登場。本人曰く2〜3年ぶりの弾き語りで、終演後のTwitterでは「2年に1回くらいならやっても良いかもね」と意欲的な姿勢を見せていた。まず手始めにフリーなスタイルでピアノの導入を演奏して見せた後、『Creation』『魔法使いのマキちゃん』と、ポップしなないでの楽曲を弾き語りで披露。続けて「いにしえのソロ時代の曲やるね」と披露した『オレンジ』では、かめがいあやこの伸びやかな声がオレンジの照明と相まって美しいライブ空間を創出。『好きになったような気がしたんだ』では照明を落とし、スポットライトが仄かにかめがいあやこを照らし出す。メロディーの起伏に乗るように感情的に変化する歌声、音圧を増していく鬼気迫るピアノ演奏には目を見張るものがあり、弾き語りならではの表現力の奥行きの深さを感じた。最後に『うそでも』、『記憶』のインストver.を披露し、自らの誇る独創的な世界観でライブハウス丸ごと覆い尽くした。弾き語りを自由形式で楽しみ、可愛げのある時に狂気じみた歌声で独創的な雰囲気を作り上げた、かめがいあやこ。ポップしなないでのボーカルとしての彼女も魅力的だが、ソロで弾き語りをする彼女にも、新たな魅力を感じざるを得ない。

3markets[ ]

3番手に登場したのは、ボーカルの自虐性、世間に向けた皮肉たっぷりの歌詞、攻撃的なサウンドメイクが中毒性を生むバンド・3markets[ ]。最初に披露した最新シングル『最愛』では、懺悔のように《愛しかなくてごめんね》と繰り返し歌い、ノリの良いシャッフルビートから始まった『レモンX』では《わかるわかるわかる》を合図にアンサンブルがより力強さを増して行き、合間合間のMCではカザマタカフミ節を披露し、観客にも笑いが起こる。『ヘッッドホン』では光線銃のごとくエフェクトを効かせたアグレッシブなギターサウンドが轟いた。最後は気持ち良いくらいに自虐を歌った『社会のゴミカザマタカフミ』を投下。矢矧暁は地べたに寝そべったまま大胆なギタープレイを見せるなど、心からバンドを楽しんでいる様子が伝わってきた。曲の歌詞、パフォーマンス共にカオスでまさに「刺さる人には刺さる」そう強く言えるバンドであろう。

尾崎リノ

3markets[ ]の後を継ぎ、4番目に登場したのは尾崎リノ。Cody・Lee(李)の正規メンバーとしても活動する彼女だが、本日はソロシンガーとして弾き語りでステージに立った。彼女の持つ透き通った天性の歌声には、ライブハウスの空気を一瞬で塗り替えてしまう力がある。特別なステージ演出も、カラフルな照明も一切必要としない。一本のアコギと、その歌声さえあれば他に何もいらないのだ。右手の指先を「コツ、コツ」とギター本体に叩きつけるリズム音、時には肘を使ってリズムを取る時の木材特有の音さえも、仄暗いライブハウスの中では美しく響いてくる。4曲目に披露した『その点滴がはずれたら』では、優しく歌声の内に秘めた力強さを全身で浴びたような気がする。ラストには『夜中のライブハウス』を歌い、マイアミパーティにバトンを渡した。

マイアミパーティ

イベント”City Lights vol.84″のトリを堂々と飾ったのは、マイアミパーティ。彼らは、フロアとの距離感の縮め方が上手い。熱い思いや感謝を語るMCはもちろん、観客を巻き込んでシンガロングする光景が思い浮かぶ。とくに3曲目に披露した『奇数と偶数』では《僕たちはまだこのまんまでいいよ》と声を大にユニゾンで歌い、赤やオレンジの温かみのあるライト演出と相まってより観客の心を掴んでいた。このキャパでは、足りない。彼らのシンガロングは、もっと大きなライブハウス、いやホール規模の会場で響き渡るべきだと思う。そう感じさせてくれるほどに、彼らのライブ運びは上手いし、見るもの全てを感動させ、味方に付けてしまう。彼らが今後どんな大きなステージで、観客を巻き込んだシンガロングを響かせてくれるのか。それが非常に楽しみでならない。

まとめ・セットリスト

セットリスト・いつかのネモフィラ

M1. その風を知って

M2. ブルーアワー

M3. 逆にね。

M4. マジックアワー

M5. リタ

セットリスト・かめがいあやこ

M1. introduction

M2. Creation

M3. 魔法使いのマキちゃん

M4. オレンジ

M5. 好きになったような気がしたんだ

M6. うそでも

M7. 記憶(instrumental)

セットリスト・3markets[ ]

M1. 最愛(モアイ)

M2. レモンX

M3. 下北沢のギターロック

M4. 僕はセックスができない

M5. ヘッッドホン

M6. 整形大賛成

M7. 社会のゴミカザマタカフミ

セットリスト・尾崎リノ

M1. 0.02mm

M2. 海岸線’21

M3. サツマカワ

M4. その点滴がはずれたら

M5. ハイウェイ

M6. 夜中のライブハウスに

セットリスト・マイアミパーティ

M1. シスター

M2. ランドリー

M3. 奇数と偶数

M4. とも/だち

M5. ごめんね

M6. p.q.b.d

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