【ライブレポート】AliA|Zeppツアー2日目にして力強く語った、アルバム「Me」に込めた想い

ライブレポート

AliA初となる全国Zeppツアー『AliAliVe 2022 -Me-』が、今年2月12日のZepp Sapporo公演を皮切りに堂々スタート。本日19日、ツアー2公演目となる東京公演を”Zepp DiverCity”にて開催した。

昨年12月5日に敢行された前代未聞の『100円ライブ』で実力派ライブバンドとしての貫禄を発揮し、潜在層の心までも掴んだ彼らの勢いは止まるところを知らない。国内最大規模のライブハウス”Zepp DiverCity”の巨大フロアに、推定1000人前後に及ぶファンを己の実力だけで集結させてみせた。

異例の『100円ライブ』を大成功に納めたAliAは、この日も巨大ステージ”Zepp DiverCity”の雰囲気に飲まれることなく、バンドの結束力を遺憾無く発揮していた。各座席には、ツアー情報が記載されたリーフレットと併せて”AliA Q&Aシート”なるものが置かれており、そのシートは実際にライブ演出の一環として使用されることとなる。開演予定時刻の17時手前、BOB(Dr.)の小慣れた影ナレが場内に響き渡る。今回は『100円ライブ』で行われたアナ雪風パロディが繰り広げられることはなかったが、さすがの安定感を誇るBOBの軽妙なナレーショントークは、アイスブレイクとしての役割をきっちり果たしていた。

※『AliA100円ライブ』のレポートはこちら→【ライブレポート】AliA100円ライブ

渾身のアルバム『Me』より届ける想いの詰まった6曲

徐々に場内SEがフェードアウトし、Zeppの巨大フロアを燦然と照らす照明が一斉に暗転。開演を告げるSEがひとしきり鳴り、ストリングスが響き始めるとともに、ステージ正面にかかっていた巨大な深紅の幕が徐々に左右方向へと開いていく。赤色のライトが旋回したちまちステージを明るく照らし始めると、ライブ衣装を身に纏ったメンバー6人が落ち着いた佇まいで登場した。

6人それぞれが所定のポジションにつくと、場内は再び暗転。TKT(Key.)の繊細な指づかいが光るキーボードの導入からスタートした1曲目は、晴れやかな音像の『天気予報』。Zeppツアーは1stフルアルバム「Me」を引っ提げて開催されたツアーであるという客観的事実を、アルバムの1曲目を飾るトラックでスタートさせることでごく自然に伝えていた。サビで片手を左右に大きく振る観客が醸し出す一体感からは、ライブの開催を心待ちにしていた様子が伺える。メンバーの背後には、AliAのアーティストロゴが大きく描かれた横断幕が掲げられた。

RINA(Vio.)の軽妙なヴァイオリン捌きに惹かれる『ノスタルジア』ではAメロで手拍子が起こり、曲の終盤ではAYAME(Vo.)の「行こうか!」と叫ぶ掛け声に合わせて多数の拳が突き上がっていた。コロナ禍で最大限行える言葉のいらないコミュニケーションを積極的に計ろうと、ファンの心と真摯に向き合ったステージングが展開された。

AYAMEが「誰1人置いていかない!」と宣言して会場を牽引したMCのあとに披露された『おにごっこ』では、TKTとRINAの奏でるウワモノを中心とした音の響き合いが、エモーショナルな雰囲気を生み出していた。《捕まえてよ僕のことを》ーー。AYAMEが声高に放ったこのフレーズから読み取れたのは、「AliAをずっと追いかけて欲しい」、「AliAの音楽はファンの傍に寄り添い続ける」といった2つのメッセージ性。「誰1人置いていかない」と先に誓ったAYAMEは、しっかりとその誓いを歌声に昇華してみせた。

AYAMEが手拍子を煽りスタートさせた『ケセラセラ』の怪奇なムードにオーディエンスが翻弄された後、サウンドのテクスチャを急旋回させ『100年に一度のこの夜に』を披露。美しいヴァイオリンの響きとAYAMEの伸びやかな歌声が交錯し、満天の星空のように壮大なサウンドスケープを繰り広げた。

先ほどまでキーボードを操っていたTKTは、次の曲へ移行する合間にキーボードからピアノへと乗り換えていく。暖色のライトが照らすステージで投下したバラード『翼が生えたなら』では、EREN(Gt.)の奏でるアコギの豊かな響きがアクセントとなり、AYAMEの抑揚がかった切ない歌声を本楽曲の主人公に導いていた。

アコースティックで浮き彫りとなる飾らないバンド像

新アルバム「Me」より6曲を披露し終えると、飾り気のない温かなバンド像を味わえる”アコースティックパート”へ突入。同時に観客はその場で着席し、BOBはドラムスティックからカホンに持ち替える。メンバー紹介を交えたMCでは、ファンが開演前に記入した”AliA Q&Aシート”が入った専用BOXを用いて、ファンから寄せられた質問にランダムで答えていく。

“対バンしたいバンドは?”と書かれた質問に対し、「Nobelbright。(本人たちに)対バンしたいと言ったら、”早くもっと上まで上がってこい。対バンする時は武道館でやろう”って言われた。」とEREN。飾らない口調で赤裸々なエピソードを語っていたのが印象的だった。MCの中で、「今の気持ちをピアノで表現して」などシャイな性格のTKTを弄り倒すシーンも散見され、バンドの仲の良さがひしひしと伝わってきた。

毎回のライブでアコースティック披露するのが恒例となった『SLIDE SUNSET』では、RINAの繊細なヴァイオリンの音色がフロアの隅々まで行き届く。「どうしたら好きな子に想いを伝えられるのかな、と思ってこの曲を作りました」とAYAMEが曲へ込めた想いを語った後に披露した『Letter』は、メンバー背後の巨大スクリーンに映し出された深紅の薔薇のプロジェクションによって、視覚的にも楽しめる一幕となった。想いを紡いだ歌詞を手紙を綴るようになぞっていくAYAMEの優しい歌声は、ファンのみならず傍で演奏をする5人の心の奥底にもきっと届いていたはずだ。

畳み掛ける後半戦で語られたアルバム『Me』への想い

バンド形態に戻り、聡明な青色のライティングや壮大な音響演出が光る『equall』を披露後、雑踏や生活音を思わせるSEを引き連れて表題曲『Me』を情緒たっぷりな歌声で歌い上げる。大サビへのスパートをかけるように各楽器の一音一音が絡み合い、束となってフロアの隅々までなだれ込むドラマチックなサウンドスケープに魅了された。

一度AYAMEがステージから捌け、先ほどまでアコギを手にしていたERENはエレキギターに持ち替える。楽器隊の5人が互いに向かい合うフォーメーションへと切り替わり、息の合ったインストセッションを披露した。それぞれの楽器の持ち味を交錯させる怒涛のアンサンブルで、オーディエンスを釘付けにしていた。

AYAMEが再びステージ上に舞い戻り、後半戦の開幕を声高に告げて投下したのは『impulse』。ド派手に点滅を繰り返すカラフルな照明をバックに、磐石なリズム隊が表立つダイナミックな音像でオーディエンスの闘志を奮い立たせた。この時場内には、今日一番の熱気が立ち込めていたように感じる。AYAMEのヘッドバンギングを見様見真似に首の上下動を繰り返す観客の姿も散見されるなど、AliAを代表するライブアンセムとしての記名性が顕在化したステージングであった。

「今日くらいはみんなで馬鹿になりませんか、台場!」ーー。AYAMEの掛け声で会場のボルテージを限界突破させたのは、新規ライブアンセム『まあいっか』。《まあいっか まあいっか》とリズミカルに投げかけるサビからは、観客が思い思いに小躍りする光景がありありと目に浮かぶ。ERENのテクニカルな指づかいでシャープに聴かせるカッティング、SEIYA(Ba.)の操るグルーヴィーでタイトなベースラインのうねりが交錯し、ロックバンド由来の強靭なグルーヴを生み出していた。2人が向かい合う形で楽器を構え、互いの持ち得る演奏技術を真正面から炸裂させ合う様子が印象的だった。

怒涛のライブパフォーマンスを繰り広げた6人は、MCへと移っていく。AYAMEが口を開き、1つ1つの収録曲にはメンバーの想いや願いがぎっしり詰まっていること、渾身の1枚「Me」は自分たちそのものを体現していることなど、アルバムに対する想いを等身大の言葉で語った。1年という長い歳月をかけ、やっとの思いで完成した「Me」。大事に育ててきたアルバムに対してAliAのメンバー6人がそれぞれが抱く想いの大きさは、第三者の俯瞰的な視点のみでは到底図りきれないだろう。

思い通りにはいかなかった去年のライブ活動を振り返り、「こんな景色のライブができると思わなかった」とAYAME。「みんなの悲しい顔を見たくはないし、みんなの笑顔を作りたいと思ってAliAは音楽を続けてる」ーー。AYAMEの言葉に表層化した嘘偽りのない想いは、観客の心へと確かに響いていた。最後に「みんなと音楽を作れる日が来るのを、楽しみに待ってる」と締め括り、メンバーと観客の存在を噛み締めながら、いつも通りの明るい笑顔を振り撒いた。AYAMEの語る言葉1つ1つにメンバーが頷き、共感を示すような表情を浮かべているのが印象的だった。

AYAMEの言葉を後に披露したのは、ピアノバラード『あかり』。暗いステージに差し込む一筋のスポットライトが照らし出すのは、観客を誰一人置き去りにすることなく牽引してきたフロントマン、AYAMEだ。《笑い合いたいな》ーー。真っ直ぐな歌声で放つその言葉には、先ほどのMCで語っていたAYAMEの願い全てが込められているようだった。

AYAMEがラストであることを告げ、黄色いライトで照らされるステージで披露したラストナンバーは『かくれんぼ』。アルバム「Me」に対する想い、”Zepp DiverCity”でライブを開催できた喜び、ファンやメンバーに対する日頃の感謝 ーー。それら全てを自身の歌声に込めて、全身全霊でフロアに投下するAYAME。歌声が内包する訴求力の大きさに圧倒され、観客一人ひとりが息を飲むわずかな音すらも聴こえてくるようだった。観客もその想いに100%で応えようと息のあったクラップを打ち鳴らし、サビでは多数の拳がフロアのあちこちで上がる。演者と聴衆の間にある物理的な距離すらも感じさせないほどに、場内の一体感は完成され尽くしていた。『かくれんぼ』は《もういいかい》ーー《まだだよ》の掛け合いがライブ映えする曲のため、”声が出せないのが悔しい”と心の中で思ってしまう。ただそれと同時に、声が出せなくともこれほどの一体感を生み出せるAliAのライブ運びの巧さに、思わず笑みが溢れてしまうのだ。

アンコールでは、宣伝用にAliAのZeppツアー限定グッズを身に纏ったメンバー6人で『ユートピア』を披露し、メンバー同士戯れながらタオルを振り回す姿が印象的に映った。SEIYAが最後、声を大にして「世界一のロックバンドを目指して活動していくので、これからも応援よろしくお願いします!!」と言葉を残していたのがハイライトで、どこまでも上を目指していけるバンドなのだな、と改めて確信を得ることができた。

最後に

今でも瞼の裏に焼きついている光景は、アンコールの『ユートピア』で見せたメンバー同士の和気藹々とした戯れだ。新大陸を目指して大舟の帆を掲げるようなテーマ性を内包するポップなナンバーで見せた彼らのそうした姿は、ダイヤモンドのようにキラキラと乱反射してこの眼に映っていた。

AliAを代表するライブアンセム『impulse』や『まあいっか』で見せる闘志剥き出しの6人も等身大の姿で、むしろそうした姿が「AliAらしさ」だと感じる人が多数を占めるかもしれない。ただ、6人組の大所帯バンドが歩幅を合わせて1つの方向に突き進んでいけるのは、メンバー同士の信頼、あるいは友情の類いを超えた”絆”があるからに他ならない。硬い絆で結ばれ、時に和気藹々と仲の良い6人で同じ目的を持ち、同じ音楽を信じて活動を続ける。それが”6人組ハイブリッドロックバンド”AliAとしての生き様であり、飾らない在り方なのだと思う。

「世界一のロックバンドを目指して活動していく」ーー。SEIYAが最後に放った一言には、”この6人ならどこまでも上を目指していける”といった確信が垣間見えた。彼のこうした確信は、この日フロアにいたファン全員の心の中に共通認識として芽吹いたに違いない。全国5都市を回るZeppツアー『AliAliVe 2022 -Me-』はまだ始まったばかりだが、2公演目にして今回のツアーのフィナーレを見せつけるかような気概を感じる充実の2時間だった。

セットリスト

M1. 天気予報

M2. ノスタルジア

MC①

M3. おにごっこ

M4. ケセラセラ

M5. 100年に一度のこの夜に

M6. 翼が生えたなら

MC②

M7. SLIDE SUNSET

M8. letter

M9. equal

M10. Me

Instrument

M11. impulse

M12. まあいっか

MC③

M13. あかり

M14. かくれんぼ

Enc. ユートピア

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