“DRAMA FESTA 2022” Base Ball Bear – 懐くて夏い3ピースサウンド

reGretGirlから後を託されステージに登場したBase Ball Bear。リハでは『ポラリス』を披露し、巧みなマイクリレーで観客を魅了していた。リハの段階で席に座りながら手を頭上に突き上げるベボベファンが散見され、彼らのステージを心待ちにしていた様子が十二分にうかがえた。リハが終わり「この後はBase Ball Bearでお楽しみください」と小出(Vo./Gt.)が自信満々に言うものだから、ワクワクが抑えきれなくなってどうしようもなくなった。

DRAMA FESTA 2022 – Base Ball Bear
セットリスト

DRAMA FESTA 2022 – Base Ball Bear

以前にも増して風がより一層強くなり、肌を突き刺すような寒さが客席全体に立ちこめる中、3人が再びステージに姿を現す。ドラムセット前で3人が集まり、息を合わせるように手拍子を数発鳴らした後にスタートさせた1曲目は『すべては君のせいで』。白く聡明なライトが照らすステージ上で、ドラムスティックを高々と掲げサビで勢いよく振り下ろす堀之内(Dr.)の姿は、何とも神々しい。Cメロでは耳心地のよいシャープなカッティングと関根(Ba.)の美しいコーラスが絶妙な塩梅で絡み合い、大サビへの高揚感を高めていた。早々に野音との相性の良さを見せつけた3人は、「ワン！ツー！スリー！」との掛け声を合図に最新曲『DIARY KEY』を投下。オレンジに光る照明と関根の奏でる艶やかなベースラインが束となり、イントロから早々に胸が高鳴る感覚が襲ってくる。サビに合わせて力強く上がる拳や大サビ前に沸き起こる手拍子から生まれる一体感で、野音を包み込む熱気は急激に高まっていた。

今まで10回近く野音のステージに立ってきた彼らだが、「僕らの経験上今日(の野音)が1番寒い。ありがとうございます(笑)」と小出。観客の笑いを誘いつつ、「自他ともに認める晴れバンドなんですけど。ほら、今日もちゃんと晴れました」と、晴れバンドとしての実績もしっかりとアピールしていく。その後誘ってくれたドラマストア(どうやらベボベの曲を学生時代に聴いていたそう)に対して感謝を伝えた上で、小出は「ロックバンドは憧れの連鎖だと思ってて。こうして連鎖していくのが嬉しいし、これからも(この連鎖で)シーンが続いていってほしい」と語っていたのがハイライトで、後輩想いな先輩風をしっかりと吹かせていた。

「軽く先輩の背中を見せて帰ろうかなと思います」ーー。MCの最後にそう語り、堀之内のドラムからスタートした『short hair』では、ステージを照らす黄色い照明と日が暮れつつある空の色が溶け合い、まさに《地元の土手で見る夕日》を目に浮かび上がらせた。小出によるアカペラのラップパートで始まった『The Cut』では、その歯切れ良いラップに加えて関根のベースラインが暴れ回り、ベボベをよく知らない観客をもグルーヴの渦に巻き込んで虜にしていく様子がはっきりと感じられた。大サビ直前で吠えた堀之内の声量のデカさには驚いたが、それは彼の持ち味であり、気迫あふれるドラミングにも紐づいている。Bメロで《君の抱えるデカい問題はこのグルーヴの前じゃ些細な存在さ》と歌っていたがこれはまさにその通りで、彼らの作り出すグルーヴはこの日この場所に足を運んだ観客一人ひとりの内に秘めた悩みや葛藤を、全て振り払うほどの殲滅力を発揮していたような気がする。

銀魂のopテーマとして知名度の高い『Stairway Generation』を披露し終え、オーディエンスを総立ちにさせた彼らがラストナンバーに選んだのは、『BREEEEZE GIRL』。4曲目からの流れで感じたのは、全く出し惜しみしてないよな、この人たち。といった所感。今や彼らを代表するライブアンセムとなった『The Cut』を投下し、大ヒット曲『Stairway Generation』に繋ぎ、最後は”夏バンド”としての記名性が最大限に表れた『BREEEEZE GIRL』で締める。こうした真っ向勝負な曲順は、野音のステージに誘ってくれたドラマストアへの最大の賛辞のようにも思える。「おれらはロックバンドとして長年かけて築いてきたキャリアを出し切るから、お前たちはそれを軽く越えていけ」そんなメッセージを感じた。アウトロで爽快に吹き抜けるリズム隊2人のコーラスは、『BREEEEZE GIRL』なんて寒そうな曲を歌ってるのにもかかわらず、むしろ寒さを吹き飛ばしてくれるような力強さがあった。加えて曲の最後にその場で立ち上がり跳躍し、力強くスティックを叩きつける堀之内は、結成20周年を迎えたベテランバンドマンとは思えない若々しさに満ちていた。