ハンブレッダーズ『ギター!ギター!ギター!』@ TOKYO DOME CITY HALL

ライブレポート

「ギター1本で世界は変えられる」

そんな大それたことを涼しい顔でサラッと言えてしまうバンドマンって、意外と少ない。バンドマンができる精一杯のことは、目の前の一人ひとりの不確かな心を救うことだ。だが、今日TOKYO DOME CITY HALLのステージに立ったハンブレッダーズのフロントマン・ムツムロアキラは、そんな大それたことを平気で言えてしまう肝が座り倒した漢だ。

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最大キャパ3000人を誇る”TOKYO DOME CITY HALL”

この日ハンブレッダーズが強烈なギターロックを繰り広げたのは、東京ドームシティ内にある大規模コンサートホールTOKYO DOME CITY HALL。3階席まで用意されており、スタンディング時の最大キャパシティは3000人を超える。正真正銘の”売れっ子”でない限り、このステージに立つことは困難だ。公式Twitterでも明言されていたが、どうやら本公演のチケットは当日までにソールドアウトとなったそう。ハンブレはどこまでロックバンドとしての存在感を拡大していくのか。彼らの伸び代は未知数で、末恐ろしい。

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最高傑作のアルバム『ギター』から放出する全身全霊の音

いつものSEが流れる中、ハンブレッダーズの3人、サポートギターのうきがステージに登場。スローンに腰を据えた木島(Dr.)は、両手を高く掲げてオーディエンスの拍手を煽る。各々がドラムセット前に集い一斉に音を鳴らし、「ワン、ツー、スリー、フォー」とムツムロ。アルバムの1曲目を飾るライブアンセム『再生』のイントロを投下し、この日のライブが幕を開けた。オーディエンスの拳が早々無数に突き上がる。

この日のハンブレはいつもと一味違った。それは間違いなく”ホール”という空間がそうさせていた。小さなライブハウスを起点に着実に力をつけてきた彼らは、暗がりが恋しいライブハウスの雰囲気によく馴染む。ライブハウス特有のそういった雰囲気に馴染んでいるからこそ、”ホール”という巨大な会場のステージに立つ彼らは、いつもと一味違く、より頼もしく感じられるのだ。『再生』で《巨大怪獣と戦わない僕のカラータイマー》と歌うが、この日のハンブレッダーズは巨大怪獣(TOKYO DOME CITY HALL)に真っ向勝負を仕掛けていた。アルバムのオープナー『再生』でライブの1曲目を飾った彼らが次に選択したのは『ギター』で、アルバムと同様の流れで序盤から畳み掛けていく。

ライブの定番曲『ユースレスマシン』、《判断基準ブレまくり/最高の褒め言葉だ》と自分たちそのものを歌った『アイソレーション』とエンジン全開で披露すると、「こんばんはー」といつもの気怠そうな声でムツムロ(Vo./Gt.)。3階席まで観客がびっしり埋まった光景に感嘆する様子を見せた彼は、「3階席〜」、「2階席〜」とホールのライブあるあるなMCを繰り広げた。疾走感あふれるイントロを引き連れ、チカチカとカラフルな照明がグッドメロディーに溶け合った『COLORS』を披露。小慣れたライブアレンジを加えた歌唱が遊び心を擽っていた。その後は木島(Dr.)の奏でる軽快なマーチングが時の流れを加速させる『スローモーション』を披露し、木島にスポットライトが照射され、『STILL DREAMING』が投下されたのだけれど、『スローモーション』から『STILL DREAMING』の一連の流れもアルバムの曲順を辿っており、アルバムツアーであることを再度実感させられた。

続くM8『ガチャガチャ』では、大量のスモークがステージ上のみならずフロアのあちこちに漂う。ライブ開演時からバックドロップに掲げられ続ける”ハンブレッダーズ”の文字は、スモーク演出と激しいメタルロックの織りなすマッドな世界の中で異様な存在感を放っていた。再び木島にスポットライトが浴びせられ、『名前』を披露。《今すぐ君の元へ》と歌う最後のフレーズが、フロア全域に染み渡る。三味線の音を使用したアレンジが印象的な『天国』、ムツムロが自ら苗字弄りをしたMCの後に『プロポーズ』へ巧みに繋ぎ、ここでもアルバムの曲順を辿った3曲を連ねてみせた。

『プロポーズ』で祝福ムードを漂わせた後、「まだまだ踊れる人はいますかー、まだまだいけますかー」とムツムロ。ハンブレのライブに何度か足を運んだことのある人ならお察しだとは思うが、遂にあの曲の出番だ。「(ホールでも)ライブハウスとやってることは変わってなくて、好きな方法で楽しんでもらえたらいいなと思います」ーー。「ワン、ツー、ワン、ツー、スリー、フォー」との掛け声から、お待ちかねのライブアンセム『ワールドイズマイン』が投下された。イントロからでらし(Ba.)とうき(Gt.suppport)がステージ前方上手側、下手側に備わった立ち台に立ち、パワフルな演奏を繰り広げる。最後は《僕らのものなのさ》と2度繰り返すライブアレンジ歌唱で魅せ、フロア全体を凄まじい熱気で包みこんだが、ここで終わらないのがハンブレのライブバンドとしての雰囲気作りの上手さ。演奏終了直後にムツムロは《弱者の為の騒音を》と口ずさみ、次の曲を歪んだギターでスタートさせた。『弱者の為の騒音を』はハンブレお馴染みのライブアンセムとして比較的初期の頃から牽引してきた曲だが、ホールを埋め尽くすほどバンドが大きくなり、音楽を届ける対象が拡大した現在でも、そのメッセージ性の重みは変わることなく真っ直ぐ胸に響いてくる。全身全霊をぶつけたアンサンブルで、《頭の悪いギターで鳴らしてやるよ》というサビそのままにギターロックで彼らの魂を極限まで震わせていた。

本編最後のMCでムツムロは「ロックバンドがどれだけ愛と平和を歌っても世界はどんどん残酷な一面を見せる。僕らの音楽が無力に思える瞬間がある。それでも、音楽を聴くことは無駄なことじゃないし、世界にとって何一つ無駄なBGMなんてない。」と語り、その直後『BGMになるなよ』を投下。ムツムロが信じる音楽の在るべき姿を観客に共有し、《BGMになるなよ》という願いは観客一人ひとりに確かに届いていた。

「イヤホンをつけたら、”絶対大丈夫だからな”と思わせる音楽を、あなたの前で歌いたい。」ーー。そう語り、聡明な白いライトが印象的なステージで『君は絶対』を披露し、音楽の力で誰1人として《1人にさせない》と宣言してみせた。終盤に印象的なMCを畳み掛けたムツムロだったけれど、吐息混じりで力強く語るその姿はまるで本当にギターロックで世界を変えてしまった英雄のようだった。

アンコールでは拍手に迎えられながらツアーグッズを身に纏った4人が登場。特に曲フリもなく颯爽と代表曲『銀河高速』をドロップするものだから、観客たちは彼らのスピード感に置いていかれまいと拳を高々突き上げていた。演奏を終えると、アンコールのMCパートに移行。ツアーグッズ絡みの雑談を交えつつ、「バンドって裏方の人がいないと成り立たないもので。初めてステージに立った時からだけど、裏方の人ありきで音楽をやらせていただいている。だからこそ、裏方の人に拍手を」と観客に拍手を促した。裏方への感謝を忘れないムツムロは、誰よりも思いやりのある優しいヒーローだ。ヒーローはいつだって優しい気持ちを持っているからこそ頼られるのだと思うし、ハンブレの音楽を心の拠り所にする人々が増加の一途を辿っているのもそうした人間性に魅力を感じているからだと思う。曲が良いのは当然なのだけれども。「ありがとうございました。気をつけて帰ってください」と労いの一言を残し、ライブハウスという存在に対する賛美歌『ライブハウスで会おうぜ』を披露し、曲の最後にドラムセット前に集まる4人。ここでライブが完結すると思いきや、不意打ちのようにダンサブルな『フェイバリットソング』をラストに投下。短尺で観客の心を舞い踊らせ、颯爽とステージを後にした彼らからは終始ホールの存在感に物憂じする様子を感じなかったのは気のせいだろうか。次はもっと大きいステージで。そんな確信に似た自信が感じられた。

【セットリスト】

M1.再生

M2.ギター

M3.ユースレスマシン

M4.アイソレーション

M5.COLORS

M6.スローモーション

M7.STILL DREAMING

M8.ガチャガチャ

M9.名前

M10.天国

M11.プロポーズ

M12ワールドイズマイン

M13.弱者の為の騒音を

M14.BGMになるなよ

M15.君は絶対

Enc1.銀河高速

Enc2.ライブハウスで会おうぜ

Enc3.フェイバリットソング

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