『日比谷ノンフィクションIX』ゲストにベボベの同期・橋本絵莉子ら登場 祝祭感に満ちた一夜に

ライブレポート

昨年11月11日に結成20周年イヤーを迎えたBase Ball Bear。そんな彼らが実に3年ぶりに、風物詩となったライブイベント『日比谷ノンフィクション』、9度目の開催を意味する『日比谷ノンフィクションIX』を開催した。

結論からいえば、小出(Vo/Gt)によるMC中の言葉を借りるならば、本公演は紛れもなく”お祭り”そのものであった。『BREEEEZE GIRL』で封切ったアンセム感満載の幕開け、花澤香菜や元チャットモンチーの橋下絵莉子など ベボベとゆかりの深い計4名を迎えたゲストコーナー。そして特筆すべきは、アンコールでの日本武館公演開催の発表。その場にいたファンはさることながら、終演後にSNS等を経由して情報を得たファンは、突然舞い込んできた朗報に小躍りしたことであろう。

本稿では、小出自身が「すげぇ情報量多かったような気がする」と形容したお祭りライブ『日比谷ノンフィクションIX』について、レポートしていく。

※MCの言葉は一言一句正確ではありませんが、悪しからず。

これまでのベボベを総浚いした楽曲群

Base Ball Bearが1曲目に選んだのは、『BREEEEZE GIRL』。いきなりのキラーチューンの投下に、オーディエンスの手が多数挙がる。3年ぶり“お祭り”であることを頭の中で意識しながらも、そこはやはりベボベ。いつもの落ち着きあるモードを保ち、3つの楽器が結束したアンサンブルを披露していく。20年という長い年月をかけて泥臭く積み上げてきたキャリアは、確かなものだ。後のMCで小出は「すごく緊張してた『BREEEEZE GIRL』からもう1回やり直したい」と口を溢していたが、フロアサイドにそうした様子を感じさせていないのは、幾度となく大舞台で場数を踏んできたからであろう。ただ、どれだけ場数を踏もうとナーバスになりがちな所は小出らしさであり、愛すべきパーソナリティーでもある。次曲『いまは僕の目を見て』では、青色の照明が鮮やかなステージ上で耳心地の良いサウンドを奏で、オーディエンスの肩を横に揺らす。

「雨全然降らねーな、おい!」

晴れバンドである誇りを堂々語った後、2年ぶりの”満キャパ”を眼前にして感謝を告げる小出。「楽しいライブにしたいと思ってますので、どうぞよろしくお願いします」と一言添え、痛快なギターロックチューン『そんなに好きじゃなかった』を披露。関根(Ba/Cho)は両足を宙に浮かせてぴょんぴょん飛び跳ねる様子も見られた。堀之内(Dr)の肉声による4カウントからスタートさせた『文化祭の夜』、ステージに置かれた発煙筒から煙を焚き上げる演出が印象的な『(LIKE A) TRANSFER GIRL』を披露後、彼らの代表曲『Transfer Girl』へと繋ぐ。この2曲の並びに感激したファンは数多くいるだろう。コンセプトが地続きとなっている2曲だが、『Transfer Girl』が10年以上前にリリースした楽曲であるのに対し、『(LIKE A) TRANSFER GIRL』は5年前(2017年)リリース、シティポップを踏襲したアルバム『光源』の収録曲。4人編成だった頃と3人編成となってから制作したコンセプトが地続きの2曲を並べることで、バンドのモードの変化を感じさせつつ、4人編成とは味の異なる『Transfer Girl』でしっかりと魅せることができるのは、3ピースで数年間にわたり試行錯誤を繰り返してきた彼だからこそ、成し得る技ではないか。ここらでパラパラと雨が降ってきたが、そうした天候もまた文学的な歌詞を連ねた『Transfer Girl』の醸し出すムードと程よく溶け合っていた。(稀代の晴れバンドとはいえ、天候を完全に操ることはできない…。)

「満キャパ、久しぶり!」

満キャパに対する想いを語る小出。その後はいつも通りナーバスであることを語り、雑談ベースで「”感慨”がライブのテンポに追いつかない」だとか「感慨さんが追いついた時にやっと本調子が発揮できると思う」だとか言い、メンバー2人を巻き込みながら謎の”感慨トーク”を展開。感慨を下げる(?)ように2人にアクションを求める無茶振りも見られ、中々カオスなMCの時間が流れる。こうして普段通りの小出節を炸裂させると、ファンの間では笑いが起こっていた。

感慨がおさまったのを確認した小出は《やっと会えた週末/近況の報告》と歌い出し、ミディアムナンバー『Cross Words』を披露。直後、最新アルバム『DIARY KEY』より『_Touch』に繋ぎ、心地の良いカッティングとグルーヴィーなベースラインで魅せていく。

ゲストには同期であり盟友でもある橋本絵莉子の姿も

3rdアルバム『(WHAT IS THE)LOVE & POP?』より『SIMAITAI』、4thアルバム『新呼吸』より『初恋』と懐かしい楽曲を立て続けに披露。ファンのボルテージを高めた彼らは、3度目のMCパートへ移行する。

「楽しくなってきたー」

楽しくなってきた、と無邪気に繰り返し、興奮気味の小出。日比谷ノンフィクションがどういうイベントであるかをメンバー2人に尋ねた後、「お祭り的なイベント」「色んな人と共演するのが風物詩」と意味ありげな言葉を語った小出は、「ゲストをお呼びします」と一言。ここで『日比谷ノンフィクション』名物のゲストコーナーに突入していく。

1人目のゲストとして登場したのは真っ白なワンピースを身に纏った花澤香菜。ベボベのライブにゲストとして参加するのは今回で初となる。 花澤によるタイトルコールより、シングル『The Cut』のカップリング楽曲『恋する感覚』が初披露された。花澤のキュートな歌声と関根のヴォーカルが絡み合うことで生まれる極上の多幸感は、3年ぶりの『日比谷ノンフィクション』を華やかに飾りつけるのに相応しい。花澤の声帯から発せられる天性のキュート・ヴォイスに悩殺されるファンもきっと多かったはずだ。

続いて2人目のゲストとしてラップの聖地に舞い降りたのは、ガーリーな衣装を身に纏ったvalknee。ここで披露したのは、最新アルバム『DIARY KEY』より『生活PRISM』。ステージ上で縦横無尽に動き回る姿からは、彼女の天真爛漫なラッパー像がはっきりと表れていたし、小出とvalkneeが掛け合う軽快なラップセッションから生まれるグルーヴに自ずと肩が揺れる。

関根がベースからチャップマンスティックに持ち替えたところで登場した3人目のゲストは、小出と長年親交が深いラッパーの呂布だ。呂布とベボベの初コラボ曲『歌ってるんだBaby』を披露すると、4人目のゲストにはなんと元チャットモンチーの橋本絵莉子(以下、えっちゃん)が登場。呂布とえっちゃんをヴォーカルに迎え投下したのは『クチビル・ディテクティヴ』。本来であればこの曲はacco(元チャットモンチーの福岡晃)、呂布とのコラボによる楽曲であるが、福岡が別件の仕事とバッディングしてしまったために、急遽代打としてえっちゃんが参加する運びに。チャットモンチーを聞いてきたリスナーならお馴染みの歌声が会場に響き渡るものだから、ベボベファン、チャットファンからしてみればこれ以上の喜びはない。ベボベのメンバーと戯れながら楽しげに最後のゲスト2人は、”お祭り感”が最高潮に達した会場を後にした。各ゲストの去り際に小出が毎回「次のライブで」と冗談まじりに言っていたのが印象的で、彼の人懐っこさが窺えた。

ゲストコーナーを終え、小出は「楽しい」「こういうのがライブの醍醐味」と語り、改めてゲストの皆に労いの言葉をかける。「若い頃は俺の実力で引っ張ってた、と思い上がってた。でもたくさんライブやって、曲作って。その繰り返しをする中で、曲は1人では作れないことも強く実感したし、2人(関根、堀之内)には感謝しています。周りの人たちのサポート、友人との友情に支えられていたことにも気づいたし、メンバーにも感謝しつつ、スタッフさんにも感謝しつつ、長いこと応援してくれている皆さんにも感謝している。本当にありがとうございます。」

小出が印象的に語ったMCの後、『Tabibito In The Dark』を披露。《僕はこの街に必要ない存在だと/塞ぎ込むだけ塞ぎ込んだ日々を逃れ》ーー。小出自身がバンド活動を通じて多くの人々と出会い、今こうして沢山のかけがえのないものを得られているからこそ、この歌詞には痛烈に響く何かがある。本編ラストには『レモンスカッシュ感覚』を爽やかに投下し、黄色に光るステージ上で3ピースの瑞々しいサウンドをフロアの隅々まで届けた。

アンコールでは、11月10日(木)に武道館公演を開催することを発表。ファンの喜ぶ様子が、場内に醸成された雰囲気だけでも伝わってきた。大きな発表を終えた彼らは最後に、強靭なグルーヴの渦が会場全域に立ち込めた『Stairway Generation』、青々と光る照明の晴れやかさが今のベボベを象徴する『PERFECT BLUE』の2曲を披露し、とてつもない情報量を秘めたライブ『日比谷ノンフィクションIX』は、2時間強で正式に幕を閉じた。

セットリスト -『日比谷ノンフィクションIX』

M1. BREEEEZE GIRL

M2. いまは僕の目を見て

M3. そんなに好きじゃなかった

M4. 文化祭の夜

M5. (LIKE A) TRANSFER GIRL

M6. Transfer Girl

M7. Cross Words

M8. _Touch

M9. SIMAITAI

M10. 初恋

M11. 恋する感覚(feat. 花澤香菜)

M12. 生活PRISM(feat. valknee)

M13. 歌ってるんだBaby(feat. 呂布)

M14. クチビル・ディテクティヴ(feat. 呂布/橋本絵莉子)

M15. Tabibito In The Dark

M16. レモンスカッシュ感覚

Enc1. Stairway Generation

Enc2. PERFECT BLUE

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