【インタビュー】4ピースバンド リスキーシフト 共通のルーツを持つ4名が生むエモーショナルで鋭利なバンドサウンド

インタビュー

取材・文=潮見そら
撮影=Kazuki

世の中の不条理や自身の存在意義を問いただすような歌詞、骨太なアンサンブルが生み出す、グルーヴィーなオルタナサウンドが魅力のリスキーシフト。なかむらともみ(Vo/Gt)のハスキーな歌声も、バンドの記名性を示す重要な要素となっている。今年4月に5曲入りの新EP『montage』をリリースしたばかりの彼らに、バンド初となるインタビューを敢行した。6000字越えのロングインタビューとなっているので、ぜひ最後までご覧いただきたい。

ナンバーガールをキーワードに集った4名

ーー 本日はお集まりいただきありがとうございます。まずは皆さんの自己紹介をお願いします。

なかむらともみ:ボーカルギター、なかむらともみです。(以下、なかむら)

アダチ:ギターのアダチです。

颯季:ベースの颯季です。

喜多:ドラムの喜多です。

なかむら:お願いしますっ!

一同:(笑)

ーーせっかくの初インタビューとのことですので、初めに好きな食べ物でもお伺いしましょうか。

なかむら:カレーとラーメンです。

アダチ:カニカマが好きです。

一同:(笑)

ふー:焼肉が好きです。

喜多:餃子ですかね。

ーー皆さん結構ヘビーなものがお好きなんですね。カニカマだけ少し異質な気がしますが。

颯季:蟹とカニカマ、どっちが好きなの?

アダチ:勿論カニカマ。蟹より美味しくないですか?

ーー蟹より美味しい…それは相当変わってますね(笑)

一同:(笑)

ーーリスキーシフトは同じ高校の軽音部で結成したバンドだそうですが、結成の経緯を教えていただけますか?

アダチ:まず、ドラム(喜多)と僕の間で”ナンバーガールが好きだ”って話をしていて。そこから思いつきで、ナンバーガールのコピーバンドをやることになりました。次にボーカルを探そうとした時に、ボーカル(なかむら)もナンバーガール好きと聞いていたので、お誘いして。その流れで、颯季もベースをやってくれることになりました。ナンバーガール好きという共通点で集った4人で、ナンバーガールのコピーバンドを高校のクリスマスライブでやったんです。そのクリスマスライブで、ナンバーガールの『透明少女』を披露したことがバンドの始まりですね。

アダチ(Gt)

ーー『透明少女』をやられたんですね。僕も大好きです。

アダチ:本当にいい曲ですよね。クリスマスライブでメンバーの相性の良さを感じたので、そのままバンドを組みました。その後オリジナルの楽曲を作り始めたりして、今に至る感じです。

ーーリスキーシフトというバンド名は、どのようなきっかけで決まったのですか。

颯季:バンドを組んで2,3ヵ月後くらいかな。軽音部の大会みたいなものがあって。その大会にエントリーするにあたって、バンド名を決めなければならなかったので決めました。

アダチ:由来は、もう…ねえ。

一同:(笑)

ーー読んで字の如く、といった感じでしょうか。

アダチ:そうですね。読んで字の如くっていう感じではあります。あとは語感の良さですかね。

ーーリスキーシフトは”集団でいることで、リスクの高い行動をとりやすくなってしまうこと”を指す単語だと思うんですけど。そうした本来の意味を踏まえた上で、バンド名の決定に至ったのでしょうか。

アダチ:そうですね。具体的に言うと、音楽的にもそういう攻め方とかができたらな、と。そのような意味合いもあります。

ーー自分たちの中にも、リスキーシフト的な思想というものはある…?

一同:(笑)

アダチ:多少なりともあるかと思います。

ふー:音楽なら、危険な思想に行ってもワルじゃないからね。

アダチ:そういう思想に向かって行きたいですね、といった感じで。

ーー普段の曲作りについてお聞きしたいのですが、作詞作曲はどのようにされていますか?

なかむら:ギター(アダチ)が基本的に作ってます。

アダチ:最近だと全部打ち込みでデモ曲を大まかに作ってますね。僕もメロディーを作れたら作って、といった流れでやってます。メロディー作りが上手くいかない時は、ボーカル(なかむら)に頼る曲もあります。

ーーなるほど。例えばどのような曲が挙げられますか。

アダチ:そうですね。今回のアルバムでいうと、『2002』と『spoil』は歌詞とメロディーをなかむらに書いてもらっています。他の曲は全部僕が作りました。

ーー基本的には、アダチさんを中心に作られているのですね。

アダチ:そうですね。大まかに作った後に、バンド全体でしっかり固めていく作業をしています。

ーーその固める作業は、どのような場所に集まって行うことが多いですか?

アダチ:普段練習するスタジオとかに集まって、少しずつ肉付けしていきます。お互いに意見を言い合ったりして、より良いものを作り上げていこうかな、といった感じでやってます。

各メンバーの音楽ルーツ

ーー続いて、メンバー皆さんの音楽ルーツをお伺いしましょうか。

アダチ:僕はオルタナティブロックがすごく好きで。それこそナンバーガール辺りのコード感に影響されてます。あとはハヌマーンの音作り、コード感を参考にすることが多いですね。

ーー他のメンバーの方々はいかがでしょうか。

喜多:自分はどちらかというと、広く浅く音楽を聴くタイプです。他人の影響をすごい受けていて。ナンバーガールを好きになったのも、ギター(アダチ)に教えて貰ってから好きになったので。周りの人たちが聞くものをおすすめされて色々聞いてきたことが、自分の音楽ルーツかなと。少し異質な気がします(笑)

喜多(Dr)

ーーお二人はどうでしょう。

なかむら:音楽全般がずっと好きで。90年代のアメリカ、UK辺りのインディー・ロックが好きなので、そこが自分のルーツかなと。

ーーインディー・ロックがお好きなんですね。インディー・ロックの要素を入れた曲作りなどはされるのですか。

なかむら:そういったことはないですね、基本的に曲を作るのはアダチなので。ただ川谷絵音さんの音楽が好きなので、歌メロとかはそこら辺に影響を受けているかなと思います。

なかむらともみ(Vo/Gt)

颯季:一番最初に自分で検索して聞いた曲がボーカロイドで。ボーカロイドを聴くようになってから、歌い手とかも知るようになって。影プロ辺りを小中で聴いてて、そこからオルタナ的な曲をボーカロイドに歌わせる曲が好きになりました。そこからナンバーガールをバンド結成時に初めて聴いて、こういう曲もいいなと思って。自分も喜多と同じで広く浅くって感じですね。嫌いなジャンルはないし、割と何でも聴いてます。結構、楽器が複雑な曲が好きなんですよね。歌がメインっていうよりは、楽器で魅せる感じの曲を好きになる傾向があります。

颯季(Dr)

ーー楽器メインの曲を好むのは、メンバー共通というよりは颯季さん独自のこだわりでしょうか。

アダチ:俺は楽器が複雑な方が好きだったりします。

同年代のバンドと切磋琢磨したい

ーーリスキーシフトは結成からまだ年数の若いバンドですが、”このバンドには負けたくない”といったバンドは居ますか。

アダチ:言うと角が立ちそう(笑)

一同:(笑)

颯季:個人的には、ルサンチマンっていうバンドです。自分たちの好きなジャンルの曲を100%でやっている感じがして。ライバルっていうよりは、「すげー!」っていう感じでいつも見てますね。

アダチ:そうね、なるべく同年代と戦いたいなと。常に意識するのは同年代です。

ーーやはり同年代がライバルに見えてくる…と。リスキーシフトのサウンドはオルタナ色が強い印象があるのですが、オルタナロックバンドで目標としているバンドは居ますか。

アダチ:僕たちは特段オルタナにこだわっているわけではないんですけど、憧れを語るなら個人的にはtricotとかですね。自分の音楽を突き通しつつ、あそこまで評価されているという姿が、憧れではあります。

4月リリースのEP『montage』について

ーー続いては、新しくリリースしたEP『montage』について伺います。まずは1曲目の『2002』。イントロのギターリフがすごく印象的でかっこいいなと思いました。どういった部分を聴いてほしいなど、推しポイントはありますか。

なかむら:そうですね。サビが終わった後に結構曲調が変わるので、そこを楽しんで貰えると嬉しいです。ライブでも、お客さんのノリがそこで結構変わるのがはっきり見えるので。ノリの変化が見られて、ライブが楽しいです。

ーーライブで一際映える曲なんですね。

なかむら:音源だとボーカルにも面白いエフェクトをかけてみたりとか、色々工夫しているところもあるので。ライブバージョンと音源の違いみたいなところで、ライブバンドとしての印象付けができたらいいなと思っています。

アダチ:イントロのリフがとにかくかっこいい!それが一番ですかね(笑)あのリフは自分でも結構気に入ってます。

ーーお二人はいかがですか。

颯季:ベースのブレイクのところがかっこいいです。”デレレレ〜”のところが(笑)

ーー感覚に任せた表現で、すごくわかりやすいです(笑)

なかむら:スタジオでもこんな感じだよね、大体。

ふー:擬音がずっと飛び交ってる(笑)

アダチ:僕らは音楽理論をあんまり知らない人たちなので。全部擬音で会話してますね(笑)

ーー2曲目が『spoil』。この曲はいかがでしょうか。

アダチ:まずこの曲ができた経緯なんですけど、昔に『エゴイズム』という曲を作ってエックスとかに載せてたんです、高校生の時に。その曲をもう全然やらなくなったので、リメイクしようと思って。ほぼ違う曲になってしまったんですけど、原曲を元にコードはそのまま使って、みたいな感じに仕上げました。

なかむら:曲を作るというか、歌メロや歌詞を書く時に、アダチがだいぶキャッチーな曲が良いみたいな話を聞いていたので。そこはかなり意識しました。

颯季:2Aでベースが最初とかなり異なる音を演奏してるので、そこを聴いてほしいなと思います。

ーーありがとうございます。そして3曲目が『アトミック』。歌詞を見ると《ピカッと光って》だったり《ギラギラ》だったり、爆弾や核などを彷彿とさせる歌詞が印象的でした。この曲はどういった背景で生まれたのでしょうか。

アダチ:実はこの曲、歌詞を少しオマージュっぽくしています。一昔前の”たま”っていうバンドに、『さよなら人類』という曲があると思うんですけど。その『さよなら人類』の歌詞が、個人的な解釈にはなるんですけど、核戦争で人が死ぬ時の状況を暗示しているような内容になっていて。爆弾や核などが落ちた時の、一瞬で全てが無くなる儚さというか。一瞬の状況について、僕なりに俯瞰的に描いた曲が『アトミック』です。

ーーそうした一瞬というのは、日常生活でも重なる部分があるのでしょうか。

アダチ:こうしている間にも、いつ亡くなるかわからないっていう感覚は常にあります。藤子・F・不二雄の作品にも、こういう感覚を呼び起こすものがあって。急に全てが無くなるかもしれないっていう不安感を、感情については一切触れてないんですけど、切なさを俯瞰的に表せたらな、という感じで歌詞を書きました。

ーーありがとうございます。次の曲が『チルド』ですね。こちらは歌詞の韻踏みを意識している箇所がいくつかあって、面白いなと思いました。工夫されているなと。

アダチ:『チルド』に関しては、説明がすごく難しくなってしまうんですけれど。だいぶ遠回しでわかりづらい歌詞で不甲斐ないんですけど、頭の中で子供を飼い慣らしてるイメージです。童心ですね。童心を飼い慣らしていて、誰もその童心に戻れないというか。そのことには気づけないんですけど、でも夜になったらそれをたまに思い出したりとか。ノスタルジーだったり、子供の頃をたまに思い出して、逃避行してしまいたくなる時は誰もがあると思っていて。そういう感情を書いた曲です。

ーーそのような感情になる時って、日常生活で例えるとどういう場面がありますか?

アダチ:そうですね。社会的にも生活でストレスが酷い時とか、どうしても逃げられない時とかは、夜になってから妄想の中に逃げ込むみたいな。精神がギリギリになった時って、人間って結構懐古したがると思うんです。そうした懐古的な、ノスタルジックな気持ちを表していると思います。

ーーありがとうございます。最後は『海抜30m』。海抜という言葉の意味をあまり意識したことがなかったので、新鮮でした。

まずあのこの曲、ちょっと物語みたいになっていて。最初はずっと部屋に閉じこもってるんですけど。メタファーでもあるのですが、サビで全てを投げ出して海へ行くんですよ。その状況を直接的に表現しないで、海抜の高さで表現しようと思って。僕らが普段住んでるところって大体海抜30mくらいのところなんですよね。ラスサビで海抜0mって言ってるんですけど、その海抜0mが暗示というか、海と同じ高さなので、海に行ったという意味なんですけど。全てを投げ出して海に行く様子を表現したくて、海抜という言葉を使いました。

ーー海抜0mというワードはつまり、全てを投げ出したいっていう感情の現れなのですね。

アダチ:そうですね。とにかくここは全てを投げ出して海へ行った、という状況を表そうと思いました。

ーー『海抜30m』をEPの最後に持ってきた理由などはあったりしますか?

アダチ:最後に持ってきた理由としては、チルドまでの4曲は全てオルタナチックというか。サウンドがそっちに寄ってるんですけど、『海抜30m』は結構ストレートなロックなので、振り幅を見せたかったというか。あとは、自分の感情を曲にしたことがなかったんですけど、『海抜30m』では感情をストレートに書いたので、それを最後に見せたかったという狙いです。

「楽しみながら高みを目指していきたい」

ーー今後のバンド全体としての展望だったり、このステージに立ちたい、といった野望みたいなものはありますか。

颯季:クアトロかな?

アダチ:そうだね。まずはクアトロに出たいです。

ーークアトロに対する思い入れなどはあるんですか?

颯季:新人バンドの登竜門的な場所ですし。

アダチ:同年代のバンドがクアトロに出だしていて。そういった姿を見ていて、自分たちも出たいなっていう気持ちがあります。

ーークアトロ立つのはワンマンで?

アダチ:できたらいいですけどね。できたらめっちゃ嬉しいですけど、いずれはっていう感じで今は思っています。

ーーCDのリリースに関して、リリースのペースをあげていきたいだとか、こういった音楽ジャンルにも挑戦してみたいとかそういったものはありますでしょうか。

アダチ:そうですね。もうちょっと攻めたような曲を書きたいなと思ったり。それだけではなくてわかりやすい曲を書いたり、ストレートに響くような曲を作って振り幅を効かせたいと思っています。

ーーまだリスキーシフトを知らないバンド好きの方々が多くいらっしゃると思うのですが、そうした方々に向けて「この曲だけは絶対に聴いて欲しい」といった曲はありますか?

なかむら:1曲だけってことですよね。えー全部聴いてほしい(笑)でもやっぱり、前回のシングルの『限界少女』をリリースして知ってくれる人が増えましたし、バンドの中のターニングポイントにはなってる曲なのかなと思うので、『限界少女』に…。して大丈夫ですか?(笑)

一同:うん。

ーー僕も『限界少女』からハマらせていただいた身です。

なかむら:やったー。ありがとうございます。

ーー最後になるのですが、皆さんにとってバンドのある人生ってどんな人生でしょうか。

なかむら:難しいね(笑)

アダチ:色んな物の吐口ではあるな、と思います。個人的には。どうですか?

なかむら:人生において・・・うーん・・・もっと考えてくればよかった(笑)

ーー人生というとちょっと難しいかと思うので、質問の仕方を変えますね。皆さんがバンドをやる意義とは何でしょうか。

なかむら:やっぱりCDを発売したり、MVを出したりとかして知名度が上がってきて嬉しいなっていう気持ちはもちろんあるんですけど。私の感覚的には、結成時にナンバーガールのコピバンをやった時の気持ちと、今もずっと変わらないところがあって。4人で遊びながら大きなところにどんどん近づいている感じがするので。何かほんと部活みたいな。部活っていうよりかはなんだろう…。

ーーRPG的な感じ…?

なかむら:あー!なんかそういうゲーム的な、遊んでる感じに近いですね。ラフな意味じゃなくて。なんだろう、楽しんでる感じ(笑)

ーー皆さんもそういった共通認識で大丈夫でしょうか。

なかむら:大丈夫ですか?笑

ーー喜多さんは…?

喜多:大丈夫です。自分も楽しむことを第一に考えています。

颯季:努力して頑張って上を目指してっていうよりは、楽しんで夢中でって感じの。それが僕ららしさかなと思うので。バンドをやる意義はそこにあると思っています。

ーーリスキーシフトのバンド像がはっきりと見えた気がします。本日はありがとうございました。

一同:ありがとうございました!

Newリリース情報

2022年4月6日  1st EP『montage』

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