【ライブレポート】SUPER BEAVER|11/7(日) 『都会のラクダSP 〜 愛の大砲、二夜連続 〜』 @ さいたまスーパーアリーナ

ライブレポート

SUPER BEAVERは11月7日、さいたまスーパーアリーナで『都会のラクダSP 〜 愛の大砲、二夜連続 〜』のツアーファイナルを迎えた。

季節が冬に近づいていることもあり、17時の開演に合わせ会場の外で過ごしている間にも、空はすでに薄桃色に染まっていた。夕暮れ時とSUPER BEAVERというバンドの組み合わせは、もはや無敵である。

ライブ前半戦

ライブの始まりを告げる合図に、会場全体の照明が一斉に暗転。暗闇の中で照明が灯り始めるとともに、メンバーがステージに姿を表す。ボーカル・澁谷の「埼玉、本気を見せてくれよ!」という挑戦的な一言から1曲目『ハイライト』で華々しくライブの幕を上げた彼らは、続けて「俺らにとっての突破口は、あなたにとっての突破口」と澁谷が言い放ったのを合図に、『突破口』をエンジン全開でプレイする。ステージを広く使って歩き回り、軽快なギターサウンドを響かせてみせる柳沢(Gt)。上杉(Ba)と柳沢が向かい合って互いの楽器の音をぶつけ合うプレイも見られ、ライブにめっぽう強いバンドとしての貫禄を、早々にアピールしていく。藤原(Dr)のちょっ早なドラム捌きも健在だ。最後は<正々堂々 正面突破がしたいな>と歌いきり、「この瞬間があなたにとっての突破口になりますように」と澁谷節の効いた粋な言葉を残す。先ほどまで煌びやかな照明で照らされていたステージが暗くなり、続けて聞こえてきたのは、『27』の印象的なギターリフ。曲の終盤では澁谷による<ロックスターは死んだ / まだ僕は生きてる>というフレーズと、柳沢と上杉の2人で<wow oh / wow oh>と繰り返すコーラスが共鳴し、オーディエンスに爆発的な感情を呼び起させる。澁谷の圧倒的声量を誇るボーカルは言うまでもないが、柳沢と上杉による鬼気迫るコーラスも圧巻だ。

『27』披露後のMCで澁谷は「あなたと音楽を鳴らしに来た」「一緒に音楽やりませんか」と、観客一人ひとりと対話するかのように語り、有観客でライブができるという決して当たり前ではない事実を噛み締める。澁谷の「お手を拝借」という呼びかけを合図にオーディエンスは一斉に両手を頭上に掲げ、『美しい日』の歌い出し<誰かにとって たかがそれくらいの>に合わせてクラップを響かせ、会場がこれまで以上に一体となっていく。ここで思わず「最高だよありがとう」と口を零し、隅々まで響き渡るクラップを称賛した澁谷。クラップにより生じた祝祭感に包まれながら、<あなたがいて 僕がいて / ともに望んでいる未来があって>と唄い、オーディエンスとともに『美しい日』を作り上げた。祝祭感が会場全体に未だ漂う中、間髪入れず『証明』をドロップ。<あなたが居ないと僕の全部 / 意味を持たないとわかった>など大胆なフレーズを、凄まじい熱量でオーディエンスの耳に、心の奥底に次々と突き刺していく。熱量そのままに『青い春』を、青々しく光る照明に照らされるステージ上で披露し、誰の心にも眠る青春の記憶を呼び覚ます。澁谷はより遠くの客席へダイレクトに歌声を届けようと、ステージからアリーナ席に真っ直ぐのびる花道を活用していたのも良い。アウトロのギターに合わせ再び鳴り響くオーディエンスによるクラップが、『美しい日』から続く怒涛の3曲ラッシュを潔く締めくくった。

続くMCでは、澁谷が新幹線でコーヒーをこぼしてしまったエピソードを語り出す。彼の人柄の良さを感じるトーク内容に傾聴していると、少し砕けた話から真面目な話へ。「俺らはこれからも”楽しい”と思えることしかするつもりはない。俺ら4人の”楽しい”は、あなたたちにしか守れない。あなたの”楽しい”が、俺らにとっての”楽しい”なんです。」と澁谷が語り、会場全体に温かな風が吹き抜けたタイミングで『mob』を投下。ステージの左右両サイドで炎柱が吹き上がる演出、ピンクやグリーンを基調としたビビッドな色合いのライティングがオーディエンスの感情を昂らせる。SUPER BEAVER史上1,2位を争うほどアグレッシブなナンバー『正攻法』に繋ぎ、<正直者は馬鹿を見る / 嘘つきの言葉は信じない>と力強く唄い終えると、最後に白く発色するレーザーライトが一瞬フロア全体を駆け抜ける演出も。ド派手な演出、攻撃的なサウンドに圧倒されながら迎えた『らしさ』では、随所で高速ビートを刻む藤原のドラムが躍動していた。ステージからのびる花道の最先端まで歩き、アリーナ席の中央部で<自分らしさってなんだろう / 変えられない大切があるから / 変わりゆく生活が正しい>と唄う澁谷の姿は、まさにロックスターと呼ぶに相応しい。

一度暗転したのち、落ち着きのある色で照らされたステージ。ここでは『愛しい人』を、エモーショナルに振り切ったアンサンブルに乗せ、歌詞が浮かび上がる演出をバックに唄い、MCパートに突入。「2020年は正直好きじゃない。ライブが出来なかった時間」と語り始める澁谷。「何よりもあなたに会えなかったことが辛い」と振り返り、「ライブでは、俺らとあなたで気持ちの交換ができる。それが嬉しいことだし、当たり前のこととは思いたくない。この曲が、大事な人を想うきっかけとなることを願います」と、制限ありでもライブができるようになった今を喜ぶ様子で語り、『人として』が披露された。思わず涙が出てしまうほど力強くも優しい澁谷の歌声に、身を委ねるオーディエンス。最後は<人として かっこよく生きていたいじゃないか>と、熱量溢れたフレーズで曲を締めくくり、最新曲『名前を呼ぶよ』へ繋いでいく。最新曲ということもあり、まだライブでの歌唱経験は浅いはずなのだが、長年歌われている曲であるかのようにその歌声が、重厚なバンドサウンドがずっしりと胸に響いてくる。オーディエンスが心の中で<名前を呼ぶよ 名前を呼ぶよ>とシンガロングしているのを、会場に漂う空気感から感じざるを得ない。

ライブ後半戦

ライブが後半に差し掛かるのを予感させる頃、澁谷の「あなたの本気を見せてくれよ!」という言葉を皮切りに、キラーチューン『東京流星群』をドロップ。メンバーの遥か頭上では、惑星を模したセットが眩く輝きを放ち、彼らのパフォーマンスに彩りを加える。花道を活用しさまざまな場所から唄う澁谷、左右のステージサイドにまで移動し会場全体のボルテージの高まりに応える柳沢と上杉。藤原はドラムセットから移動こそできないが、その場からありったけの音を奏でた。本来であれば「東京流星群!」と繰り返し、シンガロングするはずの大サビ前のパート。声を発さずともリアルな感情をメンバー全員に伝えようと、オーディエンスが澁谷の歌唱に合わせ、一斉に拳を高く突き上げた。

『東京流星群』を披露し終えると、澁谷以外のメンバー3人から、ツアーの感想が語られることに。リーダーの上杉は「今回のツアーを無事に迎えられてよかったです。」と噛み締めるように語り出し、最後に「いまバンドか最高に楽しいです。」と一言。藤原は無邪気にはしゃぐような様子で「本当に楽しい!またいつでも遊びにきてね」と投げかけた。最後にバトンを受け取った柳沢は、「コロナ禍でこのさいたまスーパーアリーナに1万人以上のお客さんを入れるのは、初めてみたいです。関係者の方々にも、深く感謝します。最後までとことん楽しくいきましょう!」と一言。会場は温かい雰囲気に包まれた。

最後に澁谷が「あなたと一緒に音楽を作っていけるように、バッチリお世話します。残り3曲。よろしくお願いします。」と告げると、柳沢のギターフレーズで『予感』がスタート。2018年のリリース以降、すっかりライブの定番曲として定着した楽曲であるが、ライブによってその都度聞こえ方が異なるのも魅力の一つだ。今回のパフォーマンスではコロナが終息した先を見据え、”あなた”とSUPER BEAVERがギュッと手を繋ぎ、更なる「楽しい」を作っていく未来を、確かに予感させてくれた。2番Aメロ部で柳沢が身体をうねらせながら、情熱的にギターカッティングをかき鳴らしていたのも印象深い。

歌詞があまりにストレートな『アイラヴユー』へ繋ぎ、<アイラヴユーが歌いたい / 愛してる 愛してる>と、全身全霊かけてオーディエンスへ真っ直ぐな想いを投下する彼ら。澁谷のボーカル、他メンバーのコーラスに一切の妥協がないからこそ、あまりに直球すぎるメッセージソングであろうと決してチープに聞こえることはない。生のライブを何よりも大切に育ててきたバンドとしての真骨頂を、この曲のパフォーマンスに見た気がする。

本編のラストを飾ったのは、『さよなら絶望』だ。「好きなことに向かっていくあなた、愛するあなたを邪魔するやつには、中指立てます。これからもあなたと俺らで一緒に音楽作っていきたい。」と声を大にする澁谷。オーディエンスが拳を突き上げる光景を確認したところで、<さよなら絶望>というコーラスとともに演奏をスタートさせた。終盤でも衰えることのない澁谷の歌声、曲が進むに連れて力強さを増すアンサンブルに呼応するかのように、オーディエンスは一度掲げた拳をさらに高く、と言わんばかりに頭上高く突き上げる。地面に膝をつけ、天を仰ぐ形で披露する柳沢の豪快なギタープレイも見られ、まさに楽曲のもつ「絶望を吹き飛ばせ」というメッセージ性に相応しい熱量で最後まで駆け抜け、彼らはステージを後にした。

アンコールで再度ステージ上に姿を見せた彼ら。澁谷が普段下ろしている長髪を、ヘアゴムで結んでいたのが目に留まった。萌え、というやつかもしれない。「あなたの”生きててよかった”になりたい」と澁谷が語ると、スタンドマイクから距離を置き、アカペラで『時代』の歌唱を始める。さいたまスーパーアリーナほどのキャパを誇る会場において、マイクを通さずこれほどまでに声を届けられるヴォーカリストは、澁谷龍太の他にいないのではないだろうか。澁谷の声にバンドサウンドが乗っかると、再度拳を高く突き上げるオーディエンス。その様子はまるで、西洋史における革命前夜の光景のようにも感じられた。澁谷が節々で語っていた「4人だけではなく、あなたと一緒に音楽をやりたい」という思いは、きっと最後の『時代』においても、しっかりと実現されたのではないだろうか。アンコール曲を歌い終えると、深々とお辞儀をしてステージを後にするメンバーたち。柳沢は、いつも通りNOiDの黒地タオルを掲げ、顔に被せる茶目っ気を見せながら去っていった。

まとめ・セットリスト

11月7日の公演をもって自身最大規模のツアーを完走したSUPER BEAVERは、アンコール前にホールツアーの開催を発表している。

彼らの魅力は何といっても、当たり前を屈折なく、真っ直ぐに言葉にできるところにあると思う。

SUPER BEAVERの音を体感したい。SUPER BEAVERと音楽がやりたい。

その衝動に突き動かされるがままに、次回ツアーのチケット先行に応募することだろう。

セットリスト
M1. ハイライト
M2. 突破口
M3. 27
M4. 美しい日
M5. 証明
M6. 青い春
M7. mob
M8. 正攻法
M9. らしさ
M10. 愛しい人
M11. 人として
M12. 名前を呼ぶよ
M13. 東京流星群
M14. 予感
M15. アイラヴユー
M16. さよなら絶望
EN. 時代

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