【ライブレポ・セットリスト】Base Ball Bear|11/11(木) TOUR 『DIARY KEY』@ 中野サンプラザホール

ライブレポート

本日、結成20周年を迎えたBase Ball Bear。節目のメモリアルイヤーとなる今年、自身9枚目となるフルアルバム『DIARY KEY』を引っ提げた『TOUR「DIARY KEY」』を開催。ツアー初日、そして結成20周年の日と重なる本日のライブは、東京・中野サンプラザホールにて行われた。

ライブに参加してきたので、早速その様子をレポートしていく。

はじめに

実は中野サンプラザホールでライブを観るのは今回が初めてだ。派遣のイベントスタッフとして入ったことはあったが、観客として来たことはない。いつもは開場後に会場へ到着するわけだが、ベボベ20周年を盛大に祝いたい気持ちが先行し、開場の10分前くらいに中野サンプラザ前へ到着。そこにはすでに入場待ちの列ができていた。入場の案内とともに建物内へ入り、検温チェック、チケットチェックを済ませ、真っ先に壁に飾られたポスターの方向へ。ずらりと貼られたツアーポスターは壮観だ。写真を撮り終え、物販へ足を運ぶ。「缶バッジだけ買おう」と考えていたわけだが、『DIARY KEY』収録曲の歌詞が縦書きで犇めくデザインに惹かれてタオルも買ってしまった。お財布は少し寂しくなったが、タオルを入手できたのは嬉しい誤算だ。そんなこんなで会場内を散策し暇を潰しつつ、チケットに書かれた2階の座席へ向かうと、そこはちょうどステージ中央の延長線上に位置する席。2階席だがステージまでの距離は遠く感じず、視界良好だ。この好ポジションからベボベ20周年記念日のライブを見届けられると思うと、胸が熱くなる。座席に座り、1曲目に披露される曲を予想しながら開演を待つ。

新旧のベボベが入り乱れる前半戦

会場が暗転し、バンドの入場SEが流れ出すと同時に堀之内(Dr)、関根(Ba)、最後に小出祐介(vo&gt)がステージへ。20周年記念日という特別な日に見る彼らの表情や立ち振る舞いは、どこかいつにも増して堂々としている。各々が楽器のコンディションを確かめ終え、小出の背伸びをし気合を入れ披露した1曲目は『DIARY KEY』。開演前の予想は的中した。やはりアルバムツアーのスタートを飾る曲は、表題曲だ。音源でも十分に堪能できたイントロの重厚なベースのグルーヴ感は、関根の所有する赤色のベースから確かに発せられている。演奏するメンバーの背後に現れたのは、アルバム『DIARY KEY』のキービジュアルとなる鍵穴を模した巨大なセット。その左右に、中抜き直方体形の、白いバルーン?で作られたセットが計8つ。ホールならではの大掛かりなセットが、視覚的にも楽しませてくれる。それらのセットが、照明演出により青や赤の様々な光を帯びると、より一層のアート色が増すのも良い。小出は緊張しているのか、とくに1番サビあたりまでは声が上擦っている印象を受けた。彼の緊張しいな性格が20周年の記念日にもしっかり表れているのは、ファンとしては嬉しい。大サビ前に鳴るオーディエンスの手拍子に応えるかのように、大サビでは小出の芯の通った歌声が、より太く、真っ直ぐに耳へ届いてくる。<Alive your side>と、楽曲のキーとなるフレーズを歌い終えると、堀之内のシャッフルビートを皮切りに『プールサイダー』を披露。薄い青色の鮮やかな照明が、”プール感”を醸し出す。イマの音を楽しんでいるのが、笑顔で飛び跳ねる関根の様子から伝わってくる。2番Aメロで曲の雰囲気が変化するのに合わせ青色から紫色に変化するなど、照明演出にもこだわりが見られた。まるで自分たちの20周年をお祝いするかのような祝祭感溢れる瑞々しいサウンドが終始響き渡り、最後は3人がドラムセットを中心に向き合う形で曲を締め、拍手が鳴り響く。

ここで1度目のMCへ。小出が「ホール久々だよね、緊張する。適度にナーバス(笑)」と口を零し、緊張しているのを明かす。『今日は帰りたい系のライブ』と早々に小出節を炸裂させる。やはり、緊張していたようだ。1曲目の声、明らかに上擦ってたし。堀之内にマイクが渡ると、「いまね、すごいグッときてる、ツアー当日だよ!?」と一言。グッときてるのは、メンバーだけではない。私たちファンも同じ気持ちだ。メンバーと気持ちが一致している事実が、嬉しい。小出が「念願のアルバムツアー開催できたことが嬉しいです。思いっきり楽しんでください。僕らも楽しみます。」と添えると、堀之内の「ワン、ツー、スリー、フォー」というカウントとともに『DIARY KEY』の中でも異彩を放つ『動くベロ」を披露。楽曲の持つ独特な空気感に馴染む紫がかった照明がステージセットを妖艶に照らす中、<倒置法のレモン/モヘンジョダロ>など言葉巧みに韻踏まれたフレーズを、ラップ歌唱にのせて矢継ぎ早にドロップしていく。ラストの間奏前<無意味が気持ちいいわ>と言葉を吐き出すのを合図に、小出によるギターソロは激しさを増し、間奏を彩る。

<もう黙らせろ>と潔く歌い終えると、暗くなったステージに一筋のスポットライトが差し込み、小出を照らし出し迎えた曲は『GIRL FRIEND』。<抱きしめた最悪の結末が>と、語るように『GIRL FRIEND』のサビの一節を歌い出すと、柔らかな薄いピンク色の照明がステージを照らす。Cメロに入ると今度は冒頭の薄いピンクとは真逆のビビッドな赤色で照らされるなど、その照明演出一つ一つにもバンドとしてのクリエイティビティへのこだわりが垣間見える。ラストサビ直前のBメロでは「Yeh,Oh」という掛け声に合わせ、手を掲げるオーディエンスの姿からは「思い切りライブを楽しもう」という強い意思表示のようなものを感じた。

『GIRL FRIEND』の演奏が終わり、一呼吸置いてステージが黄色いライトで照らされると、関根のソロ曲『A HAPPY NEW YEAR』が披露される。アルバム発売後、初めてこの曲を聴いた時に感じた「優しすぎるラブソング」という印象通りに、サビでステージを照らす温かみのあるオレンジ色の照明、あくまで関根のボーカルを目立たせよう、といった意思の感じる小出のハモり、随所で微笑みを浮かべる関根の表情などが、楽曲の醸し出す”優しさ”を創出していた。<幸せたくさんありますように/生きてくれてありがとう/幸せが降り注ぎますように>と、オーディエンスの心を多幸感で満たしながら迎えた次の曲は、ベボベを代表する青春ソング『17才』。レモンのように鮮やかな黄色で照らされるステージの煌びやかさ、サビの「17才 it’s seventeen」に合わせて鳴るオーディエンスの手拍子が、誰もが経験したであろう”17才”という青春期への憧れを加速させていく。大サビ直前では堀之内がスネアを連打し、高揚感を誘うフィルが躍動。最後に小出は<17才 it’s a seventeen / それが Uh-uh すべてだ>と、バンド結成当初のフレッシュな気持ちを思い出すかのように気持ちを込めて歌い上げた。

「ライブが始まってからずっと緊張してる。ハチャメチャに緊張。憂鬱。」と、小出はまだ緊張が取れていない模様。「でもあれだよね、ライブはジェットコースターと同じ。ジェットコースターの怖さも、慣れてしまってはつまらない。いつまでもキャー、と言えるジェットコースターであって欲しい」と続けると、「まあね。いや何の話だよ!」と堀之内が的確にツッコミを入れ、笑いが生まれた。いやほんとに何の話だよ。

ここで軌道修正し、話題は結成当時の話へ。「20年前にやった文化祭ライブの当日のこと覚えてる?」と小出が切り出すと、堀之内が直前まで生徒会の仕事をしていたこと、堀之内が学年でワースト2位の成績だったこと、関根が男装でライブに出演したことなどが明かされる。「友達いなかったから、当日まで文化祭でバンドをやることをクラスの人に伝えられなくて。当日、出し物の準備の途中で抜けないといけない罪悪感もあって、とりあえず男装で出ることにした。あとは、男の中に1人スカート女がいるっていうのがただただ恥ずかしかった(笑)」と、男装の理由を赤裸々に語る関根。関根が男装でライブに出た理由はまだメンバー間でも不明だったらしく、大変貴重なエピソードトークとなった。その後小出はクラスの出し物の話、長崎のカステラ屋の話などをし、「MCが予言通り内輪話になってしまいましたが」と口を零すと、堀之内が再度的確に「いつものことだよ!」と呆れた様子でツッコみ、会場は再び笑いに包まれた。

「喉が渇いた」と言い、タンブラーを手に取る小出。そのタンブラーは、紛れもなく今回のツアーグッズのそれだ。「このタンブラー、めちゃくちゃかわいいんですよ」と茶目っ気満載に切り出す。「あ、でも今日はグッズ全部売り切れちゃってるらしいです。ツアー初日なんだしもっと用意しとけばよかったね、すみません」とツアーグッズの宣伝を終えたところで、「こんな引き伸ばして宣伝かよ(笑)」と自分でツッコミを入れる小出。ベボベのMCはMCというよりかは漫談なんだよな、とつくづく思わされる。

「20年前は体育館で歌ってたバンドが、今は中野サンプラザでライブしてる。これって凄いことだよね。俺たちに着いて来てくれた皆んなに感謝します」という小出の言葉を後に披露されたのは、小出→堀之内→関根の順でボーカルマイクが渡っていく楽曲『ポラリス』。間奏では小出→関根→堀之内の順で楽器のプレイングを披露するなど、しっかりと各々見せ場を作った。続いて赤と青の強烈なライティングがせめぎ合う中、2009年リリースのキラーチューン『LOVE MATHEMATICS』をドロップ。照明のカラーリングが目に焼き付くようなステージ演出、堀之内が叩くドラムのダイナミズムを筆頭にひときわ激しさを増すバンドアンサンブルにより、会場全体が熱気に包まれ、オーディエンスは踵を地面から離し、縦ノリを続ける。『LOVE MATHEMATICS』の勢いそのままに『悪い夏』を披露し、間奏ではライティング演出と相まって小出のギターソロがその力強さを十二分に発揮していた。

堀之内がシンバルを叩き「シャン」と締めると、ギターのカッティングを皮切りに『Touch…』を披露。サビでは心に突き刺さるエモーショナルに振り切ったサウンドとともに、ステージ上に設置された数個のライトが、エメラルド色の光りを放ちながらくるくると回り、その美しい光を会場全体へ行き渡らせる。オーディエンスはエモーショナルなサウンド、ライティングに酔いしれるように自然と肩を揺らし始める。音源で聴く分にはあまり気になっていなかったが、小出により「タッチ…」とセクシーに囁かれるフレーズの生音での破壊力は段違いだ。最後は3人が向き合いながら、初心に返ったかのように全力で音を鳴らし続ける様子が印象であった。

ここで一度、アルバムのプロモーションの話に。「取材を受ける度に”20年は長かったですか、それとも短かったですか”と聞かれまくった。僕は”あっという間でした”と答えたけど、他の2人は違くて。その感じ方の違いもひっくるめてバンドだなと」と語る小出。「東京も20年で景色が変化してる。世の中の流行り廃りも変わってる。眉毛一つとっても変わってるしね。関根と堀之内なんて、昔はあんな細い眉毛だったのに、今はすっかりこんなに太眉」と続けると、「なんで眉毛の話になるんだよ!」と安定感のあるツッコミを入れてくる堀之内。このやり取りには、いつまでも飽きない自信がある。「この20年の間に堀之内には子供が生まれたし、何もなかったところから命が生まれる。バンドも、試行錯誤しながらずっと変化してきた。バンド結成から20年経った今、アルバムが自信作だと言えてるのは、さりげなく凄いことだと思うようになりました」と語る小出。

「これから10年、20年を目指してバンドをやっていく。10年後、20年後、自分たちがどう変化していくのかが楽しみです。これからも変わり続ける自分たちをよろしくお願いします。そんな”循環”を歌った曲です」という言葉を合図に、『新呼吸』を披露。1サビ終わりに急激に早まるテンポ、Cメロのラップパートに、関根のコーラス。曲が後半に向かうにつれて小出の声色はより鮮明に、力強く響いてくる。大サビでは、すべてを解放するかのようにバンドを構成し得るありとあらゆる要素が最大限の高まりを見せ、壮大なロックサウンドへと変貌を遂げた。アウトロでは、歪みの効いたギターに乗せて、まるでこれまでの20年を振り返るかのように「La La La…」と物憂げに歌い、それに合わせてオーディエンスも先ほどまで掲げ続け手を下ろし、肩を横に揺らす。

アルバムの終点へと向かう後半戦

会場が”新しい朝”の運ぶ新鮮な空気で満たされたところで、ラッパー・valkneeを迎えて『生活PRISM』を披露。颯爽と現れたvalkneeは「Base Ball Bear20周年、おめでとうございます!」と口にし、ベボベの記念日を祝福する。ステージはオレンジライトに彩られ、ダンスフロアに迷い込んだような気分に。valkneeの声は音源そのままに耳まで届き、その歌唱力の高さに驚かされた。これまでラップへの挑戦を続けて来た小出によるラップ歌唱は絶好調で、valkneeとの掛け合いも引っ掛かりがなく、耳馴染みが良い。最後は「valkneeに大きな拍手を!」と小出が煽り、温かい拍手で包まれるステージを背に彼女は笑顔で颯爽と去っていった。堀内がドラムスティックを高く掲げるのを合図に『ドラマチック』を演奏し、Bメロで打ち鳴らされるオーディエンスの手拍子をきっかけにサビで炸裂するバンドサウンド、熱のこもった小出の歌声が、ライブ必須のキラーチューンとしての威厳を見せつけた。2番に入り急激に高まる関根のベースのグルーヴ感には、圧倒される。最後はドラムセットに向き合い、アウトロを最後の最後まで噛み締めるように引き伸ばして余韻を残した。

続けて、群青色の美しい海を模した背景をバックに「海へ」を披露し、小出が「来年はまたたくさんライブができる年にできたらいいな。今日はありがとうございました。またお会いしましょう!」と一言。本編ラストの曲として『ドライブ』の演奏を始める彼ら。<生きている音がする やんでもまた再生しよう>と歌う小出の歌声には、優しさ、力強さ、決意が凝縮されている。今、この場所で鳴っている音を大切に、一歩一歩踏みしめて前進するようにアンサンブルを続け、「ありがとうございました。Base Ball Bearでした」とステージを後にした。

アンコールを控えたステージには、『DIARY KEY』のキービジュアルとなる鍵穴を模した巨大セットが、その存在感を放ち続けている。じっと見つめていると、鍵穴の中に身体ごと吸い込まれてしまいそうだ。ステージに眩い光が灯り、再びステージ上に現れたメンバーは、またいつものようにラジオ感覚でトークを始める。小出が「新呼吸から緊張感でずっと胃が痛かった」と一言。このおじさんは、一体いつまで緊張し続ける気なのだろう。バンドを20年もやってきて、未だ若手バンドのように「緊張で胃が痛い」だなんて、この手のバンドマンはそういない。

「ホールでのライブは久々で、楽しかった。ホールでしかできない立派なセットもあったし。次やる曲なんですけど、文化祭の日に喧嘩で一度解散してしまった僕らが、文化祭で演奏した曲です。解散した0日目に「タッチ…」するような曲」と『Touch…』の一節をイジる小出。「20年ぶりにスーパーカーの『My way』って曲のカバーやります。文化祭のライブで1曲目に披露した曲です。昔は音響トラブルでうまく演奏できずに終わったけど、この場にはちゃんとしたプロの方がたくさんいるからきっと大丈夫」と過去のエピソードを交えつつ、当時の記憶を呼び覚ますように『My Way』を演奏する彼ら。熱量そのままに「永遠の文化祭バンドBase Ball Bear、21年目からもとことんやっていくぞ!行けるか中野!!」と堀之内が叫び、『夕方ジェネレーション』を披露する。オレンジ色の照明が夕方の雰囲気を作り出し、ステージに彩りを加えていく。「20年ぶりの文化祭終了です。以上、Base Ball Bearでした。」とそのまま畳み掛けるように『祭りのあと』を披露し、最後は堀之内が椅子の上に立ち、ジャンプからのドラム叩きでドラムスティックを派手に宙に舞わせ、結成20周年を祝福するライブは幕を閉じた。

まとめ・セットリスト

セットリスト
M1. DIARY KEY
M2. プールサイダー
M3. 動くベロ
M4. GIRL FRIEND
M5. A HAPPY NEW YEAR
M6. 17才
M7. ポラリス
M8. LOVE MATHEMATICS
M9. 悪い夏
M10. _touch
M11. 新呼吸
M12. 生活PRISM(feat.valknee)
M13. ドラマチック
M14. 海へ
M15. ドライブ
EN1. My Way
EN2. 夕方ジェネレーション
EN3. 祭りのあと

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