【ライブレポート】Base Ball Bear『 LIVE IN LIVE(夏)』初日公演

ライブレポート

とうとう来てしまった。Base Ball Bearによる夏曲祭りのワンマン。チケットは最速先行から落ち続け、一般発売にも敗北し、『TOUR LIVE IN LIVE(夏)』への参加は完全に諦めていたところに、当日になって”当日券販売”などという救いの手が…!というわけで、藁にもすがる思いでベボベを拝む切符を勝ち取ったわけである。

はじめに

ライブハウスの空気感は、独特という曖昧なニュアンスだけでは表せない。匂い、照明、さまざまな来場者、運営サイドの人々。すべてが一体となり、唯一無二の雰囲気を醸成している。ライブハウスにに訪れる際は、癖で周りの人の服装チェックをしてしまう。クタクタのコンバースを履く人、全身ベボベファッションな人、レモンスカッシュでも浴びたかのように真っ黄色な服を着て、アイデンティティ満載な人。まるで曲の歌詞に出てきそうな字面が立ち並ぶ。これこそが、ライブハウスの醍醐味だと思っている。それぞれ全く異なる想いを抱いて、ときには文化を越えて、さまざまな人々が足を運ぶ場所。ライブハウスそのものが、銀河に佇む一つの惑星なのだ。

自分はあくまで当日券でライブへの参加権をもぎ取った人間なので、先行でチケットを当てた、あるいは一般発売でチケットをもぎ取った方々が入場し終えたあとに、入場が案内される。案内されるがまま、地下への階段を降っていく。十数段の階段でさえ、まるでレッドカーペットの上を歩いているように感じ、アカデミー俳優気分になる。600円のドリンク代を払い、ついに会場の中へ。

中へ入ると、椅子はなく、ビニールテープでマス目が作られている。格子状に広がったマス目の上に、一人一人が立つようだ。感染症予防のガイドラインをなんとかして守ろう、と苦悩する運営サイドの心情を噛み締めながら、どのポジションから観るか物色を始める。当日券組としては最速レベルで入場したからか、立ち位置の選択肢は案外多かった。「最後列しか空いていないのでは」などと思いながらすべてを寛容に受け入れる気持ちで入場したのだが、数々の選択肢が眼前に広がっていたためニヤニヤが止まらない。そして迷いながらも、自分は下段左側の真ん中あたりに陣取ることにした。

さあ、あと数分でライブが始まる。高鳴る胸の鼓動を抑えながら、今これらの文字をスマホで打ち続けている。そんなこんなで、今ナレーションが始まった。もうすぐライブが始まる合図だ。一旦スマホとはお別れするとしよう。

ライブ前半戦

毎度お馴染みのSE「Making Plans for Nigel」が流れ出すと、堀くん(堀之内)がガッツポーズしながら堂々の登場。それに続きこいちゃん(小出祐介)、関根嬢(関根史織)がのらり、くらりと登場。圧倒的な場数を踏んできた彼らの、バンドマンとしての余裕を、初っ端から見せつけられている。関根嬢めっちゃ手振ってくれるし、笑顔がまぶしい。

軽くいつものバンドの自己紹介が終わると、さっそく1曲目へ。印象的なフレーズ<付箋だらけにした ノート睨むあの子や>から始まったのは『senkou_hanabi』。今回は夏をテーマにしたツアーなだけあって、初っ端からとんでもなく強烈なサマーナンバーが胸の高鳴りを誘う。サビ前の<ぺにゅっすうぃ(When you see)>は、いつにも増して力強く、そして胸にどすんと響いてくる。それにしてもやはりバンドは仲の良さが音楽にそのまま表れるなー、と改めて思う。3人が楽しそうに、表情豊かに奏でるバンドアンサンブルを聴いていると、こっちも自然と顔がほころぶ。関根嬢の独唱パート<今夜楽しみだね打ち上げ花火〜この瞬間を感じたいから>が、これまた良い。普段何気なくイヤホン越しに聞いている関根嬢の声は、生だとさらに濾過され、透明度に磨きがかかっている。

アウトロで痛烈なギターサウンドが後味を残すと、次に流れてきた2曲目『SUMMER ANTHEAM』のイントロ。夏空を切り裂くほどのギターの歪みが、「夏はまだ終わらせまい」と主張しているかのようで、身体が勝手に小刻みに震え出して止まらなくなる。サビのキラーワード<散々笑って泣いたら 3万マイルの距離から>を聴くと思わず合唱したくなるが、こんな状況なのでグッと堪えてそのフレーズを噛み締める。間奏で関根嬢がぴょんぴょんと跳ね出すものだから、そのノリに合わせて自分もマス目から出ないように上下運動を始める。

君にとっての 今年のこの夏が
君にとって 永遠になれ!

https://www.uta-net.com/song/65379/

『SUMMER ANTHEAM』において最もお気に入りのフレーズが脳内に刻み込まれ、「この時間が永遠に続けばいいのに。」なんて思っていると、ぬるっとMC①へ。季節の曲をしっかり持っているというのはバンドの強みになり得ること、気づいたら夏曲が量産されていたことなど、ラジオみたいな空気感でトークが展開される。「夏、秋、冬とバランスよく曲が作られていくはずが、気づけば夏曲だらけのバンドになってた。そんなバンドがBase Ball Bearです」と笑い混じりにバンドの自己紹介をするこいちゃん。MCの締めにこいちゃんは「やりたいことが全くできない夏だったけど、ぜひ今日のライブで夏の全てを回収して」と一言。頼もしい。こいちゃんが言うのだから、ぜひそうさせてもらおうではないか。

MCが終わると、風に乗りたくて見上げてしまう最強の夏曲『BREEEEZE GIRL』が、3曲目に早くも登場。関根嬢のぴょんぴょん具合が、先ほどよりも大幅に増す。ここまで立て続けにサマーアンセムが続くものだから、オーディエンスも高揚が抑えられない。皆が縦に揺れ、思い思いに瞬間の音を楽しむ。声は発せなくとも、身体一つでライブを楽しめるというのは、今となっては当たり前になっている文化だ。Bメロでのこいちゃんと関根嬢の掛け合いにはズレが一切なく、メロディーが総天然色に彩られていく。3人でのユニゾン的な<WOW WOW WOW〜>が終わると、4曲目『Good Bye』。1single『ELECTRIC SUMMER』のカップリング曲である。先ほどまでの青々しい雰囲気とは打って変わって、ステージには紫がかったライティングが施され、ムーディーな雰囲気に。

冥土までは付き合えないから、ここで
街が紅くなってしまうから、ここで グッバイ

https://www.uta-net.com/song/42297/

<グッバイ>を、切なくも軽やかに歌い上げるこいちゃんは、やっぱりボーカリストとしてもすごいなー、と。ムーディーな雰囲気を保ちながら、ライブで披露するのはかなりレアな曲『Fragile Baby』5曲目として登場。ギターリフに挟み込まれるコミカルなビートがチクチクと刺さるイントロが流れ始め、オーディエンスは『Good Bye』でのスロウテンポな横ノリから、徐々に小刻みな縦ノリに変化する。最後に<壊れないで>と抒情的に歌い上げると、6曲目『Transfer Girl』。この夏幾度もイヤホン越しに聴いていたギターリフが、生の音として伝わってくるのが新鮮で、思わず両目を閉じ、イントロを噛み締める。この曲が仮にイントロだけで終わる曲だとしても、十分に価値があると思っている。それだけ、この『Transfer Girl』のイントロは最高なのだ。2番のサビからラストサビへの架け橋として展開される間奏では、こいちゃんのギターテクが炸裂。これほどかっこいいギターソロがこの世に存在して良いのだろうか。感動体験の連続が続き、満腹に近い感覚に襲われる。

『Transfer Girl』に思いを馳せ、最高潮のムードの中、そのままMC②に移っていく。こいちゃんの「今年の夏ほんとにやりたかったことは?」に対して堀之内は「ライブ、フェス」と答えると、「それは皆んな思ってることじゃん」と一蹴。それに対し堀之内が「野外のプールいけなかったから、家で俺用と2歳の子供用のプール設置した」と言うと、そんなこんなで話題は東京サマーランドの巨大バケツ?に。「サマーランドのこいちゃんの「今年の夏ほんとにやりたかったことは?」に対して堀之内は「ライブ、フェス」と答えると、「それは皆んな思ってることじゃん」と一蹴。それに対し堀之内が「プールいけなかった」「家で俺用と2歳の子供用のプール設置した」と言うと、そんなこんなで話題は東京サマーランドの巨大バケツに。「サマーランドの巨大バケツから出てくる水で鞭打ちした経験がある」と、こいちゃん。「あの水に耐えられるかどうか、子供連れてって試してみたら?」「耐えられたら、プールファイター。耐えられなかったらプール一般人」とこいちゃんがふざけて言うと、「私も試してみたい」と便乗を仕掛けてくる関根嬢。プールファイターという謎の造語について一頻り盛り上がると、「結局プールファイターってなんだよ!」と皆の意見を集約する堀之内。プールファイターという横文字がゲシュタルト崩壊を起こしそうになるような、そんな公開ラジオ収録(MC)を目の当たりにした。ちなみに関根嬢の夏の思い出は、競泳用の水着着用で市民プールでガチ泳ぎをしたこと、こいちゃんの今年の夏の後悔は、せっかく日傘を買ったのにもかかわらず、使う機会も特になかったことだそう。

オーディエンスの脳内がプールファイターで埋め尽くされたところで披露された7曲目は、『short hair』。<心の天井 登ってった風船が割れた>から始まる文学チックな本楽曲が演奏されると、会場全体は青春の海に早変わりする。青春の風を浴び、多幸感に包まれる中で続けて披露された8曲目は、『転校生』。6曲目に披露された『Transfer Girl』の日本語訳だ。終始とにかく堀之内の叩く、ダイナミズムの滴り落ちるドラムが、ゴリゴリに耳を刺激してくる。「WOW WOW WOW〜」の掛け声が、制限のかかるライブ会場を一体にさせる。攻めの姿勢を見せ続けるバンドサウンドに加え、こいちゃんの目が覚めるようなギターソロもあり、恐らく今日一の温まりを見せたところで、緩急をつけるようにぬるっとMC③に突入。「せっかく温まってきたところでまた冷やしちゃってすみません」とこいちゃん。先程のプールファイタートークとは打って変わって、ここではコロナについての話題に。「みんな、他人の意見がどうこう言わずに居るのがいいんじゃないかな。払い戻しを選択する人も、ベボベをどうしても見たいから、と来た人も、みんなそれぞれ正しい。」と、オーディエンスに投げかける。

ライブ後半戦

コロナ渦でのライブの楽しみ方に再度考えさせられたところで迎えた9曲目『プールサイダー』。タイトルが「水際の傍観者」を表す本楽曲は、現在の自分達と重なるものがある。

きらきらに飛び込め it’s okay 
楽しもうよ いまを
静かに苦しんだ日々に 飛沫の祝福を

https://www.uta-net.com/song/304122/

キラキラに飛び込めずにいるオーディエンスに投げかける、最上級の讃美歌。軽快に弾むドラムの演奏に、体が宙に浮くような感覚にさせられる彼らのアンサンブルからは、飛沫の祝福を感じざるを得ない。プールサイダーの主張を噛み締めたところで迎えた10曲目は、『海になりたい(part.2)』。あなたを包む海になりたい、というコロナ禍における深い深い深海のように深いメッセージソングだ。11曲目には、最高峰の縦ノリソング『Crazy for youの季節』。オーディエンス、演者ともに本日最高潮の盛り上がりを見せる。興奮冷めやらぬ中迎えた本編最後となる12曲目には『ドラマチック』。こいちゃんがギターを丁寧に爪弾きながら、<ドラマチックチック 止められそうにない 止めたいと思わない/熱くなれるだけ熱くなりたい>と静かに歌い出す。それに続けて、本来のイントロのフレーズが始まり、一気にドラマチックなムードに。

本編最後の演奏が終わると、メンバーは舞台袖へはけていく。それは同時にアンコール隊の始動も意味し、手拍子が始まる。しばらくすると、「待ってました!」と言わんばかりにメンバーが再登場。堀之内は、毎度お馴染みファイティングポーズを決め威風堂々と登場。関根嬢は相変わらずピュアな笑顔を振りまいてオーディエンスに手を振ってくれている。こいちゃんは、というと、こちらも相も変わらずクールな面持ちで颯爽と登場。本編が終わり相当なエネルギーを放出しきっているだろうに、その様子を感じさせない、Base Ball Bear、恐るべし。と言いかけたところに、MC④に入るや否やこいちゃんは「3ヶ月も空くとダメ。疲労への耐性がなくなる。今日が一番疲れをシビアに感じてる状態でのライブだから、貴重。ここから疲労への免疫が上がっていく成長記録を見守って」と一言。こいちゃんは余程疲労を感じているらしい。そりゃまあ疲れるわな。また、このMCパートで飛び出した言葉で最も強烈だったのは、「ライブは恥部。今回のツアーは恥部in恥部。」とこいちゃんが放った言葉。どうやらライブであんな姿やこんな姿が写真や映像で切り取られるのは恥ずかしいらしい。「ライブは恥ずかしいところを見せまくる場所。普段は全然大きい声を発さないのに、ライブだと大声を出す。口を大きく開けてる瞬間などを、写真に撮られたり配信されたりする。」関根嬢もそれに対し「うん、わかるわかる」とツッコミどころ満載の相槌を打つが、そういうところが「関根はおじさん臭い」と呼ばれる所以であろう。堀之内は冷静に「いや、恥部て!」とツッコミを入れるが、どこか楽しそうである。こいちゃんが「今日はライブは恥部だということを覚えて帰ってください」と締めると、2日後の配信ライブに先駆けて重大告知が発表。「Newアルバム、『DIARY KEY』発売します」と一言。

告知に続き、アンコール1曲目としてその表題曲『DIARY KEY』が披露される。今後のBase Ball Bearにワクワクしてしまう、ベースラインの暴れ方が気持ちの良い曲だ。「本日はありがとうございました、Base Ball Bearでした!」の一言に続いて大トリを飾ったのは、『祭りのあと』。ここでもまた堀之内の圧巻のスティックさばきが炸裂する。また激しくかき鳴らされるギターソロ、繊細に音を奏でる関根嬢のベースも助け、徐々に興奮が最高到達点に達していく感覚は、この曲ならではのものである。

メンバーがステージ上からはけていき、正式にライブ終演。終わってしまった。ベボベの夏が。徐々に現実に引き戻されていく切なさを感じる一方で、全身が多幸感に包まれ、ふわふわとした感覚が残る。

まとめ・セットリスト

ライブのセトリをプレイリストに起こした今は、マリオで言うスターの無敵状態だ。いつでもこのライブで味わった多幸感を甦らすことができる。発売予定のNewアルバム『DIARY KEY』を楽しみに待ちながら、彼らの音楽を日常のスパイスとして手元に置き続けようと思う。

セットリスト

M1.senkou_hanabi

M2.SUMMER ANTHEM

M3.BREEEEZE GIRL

M4.Good Bye

M5.Fregile Baby

M6.Transfer Girl

M7.Short Hair

M8.転校生

M9.プールサイダー

M10.海になりたい

M11.CRAZY FOR YOUの季節

M12.ドラマチック

EN1.DIARY KEY

EN2.祭りのあと

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